ゲームマーケット2016秋 新作同人ボードゲーム「うさぎの政略結婚」のレビュー感想です。
デザイン | ショーナン |
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イラスト | ショーナン |
人数 | 2~2人 |
時間 | 15~30分 |
年齢 | 10歳~ |
価格 | 1000円 |
発売 | 2016秋 |
難易度 | 超簡単 簡単 [普通] 難しい |
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こんなこと書くと製作者のショーナン様に怒られてしまいそうですが、まずゲムマ紹介文の「3行で説明3 ウサギキャラの超絶かわいらしさに君たちキュン死」や「最高にキュートでラブいゲーム」がかなりシュールです。本気なのかどうか分かりませんが(おそらく本気)そんな文言とは裏腹にきちんと愉しめて何度もやりたくなるボードゲームです。
プレイ記
うさぎの政略結婚は2人の協力ゲームです。
二人併せてラブラブ勝利トークンを6個集めれば結婚成立、失敗すれば両国の戦争が始まり負けとなります。
「まずはカードを引いてプレイすればいいのね」
手番の処理は簡単で、カードを引いて手札からプレイして場のカードを補填するだけ。
「なるほど、二人でリソースを管理しつつ、そのリソースを使って勝利トークンをゲットすると。」
リソースは2人で持てる数が限られていて、それをどのように二人で保管していくかが重要となってきます。
カードをプレイすると場札と相手にも影響が及ぶので、そこをうまく調整しながらアクションを進めていきます。
「けっこうピンチになってきたね」
「あ、4溜まった」
「ならもう話せるね、実はあの時―」
4ポイントの対立目に入ると「話す」ことが許可されるので、こういったところにも協力ゲームにおける奉行問題も解消している工夫が感じられました。
また、単純に「話す」ということが許された場合にゲームが少しゆるくなり、ただしピンチなのは変わりませんのでその辺りのバランスもプレイしていて小気味良いです。
「このうさぎ、絶妙なかわいさがある笑」
絵柄のうさぎたちも可愛く、プレイをなごませてくれます。
「いける!?」
「いったああー!(ハイタッチ)」
「今回はノーマルで勝利だけれど、次回はもう位置段階上のレベルで挑戦したいね。」
レベルも6段階あり、イベントの処理方法も毎回リソースが異なるのでリプレイ性も高い作りになっています。
インタビュー
なかなかウィットに富んだご返答でした笑
―HPを拝見したところ、だいぶ前から創作活動をされてらっしゃるようでした。
それらの経緯と、初めはPCゲームからだと思うのですが、ボードゲームになぜ移行したのかを教えていただけないでしょうか。
元々同人誌サークルで絵描いてたんですが、二次創作では自分の有り余る才をもてあますと思ったので、個人サークル立ち上げてPCゲーム制作はじめました。数年かけて自身の最高傑作を生み出したので、ツールの限界もあってこれ以上自分の表現したいものが作れない状態になり、新たな表現技法を模索した結果アナログゲームに行き着きました。特にSLGが好きだったので、1ユニットに膨大なデータを割り振るデジタルゲームに比べ、1つのキューブやミープルで無限の可能性を表現できる部分に惹かれました。
―ボードゲームは次の新たな表現の挑戦、ということなんですね。
外部に頼らず手作りに徹しているということをお聞きしたのですが、何か理由はありますか?
常に自身の最高傑作を生み出すことを目的として活動しているので、自身で手を入れられる箇所は全て自身でこなすようにしています。こう言うとキャーショーナンカッコイーですけど、単純に生産数を1部単位でコントロールできるからと、あえて生産に労力をかけることで自分で後悔の無い仕様を毎回詰める為です。印刷屋に出しちゃうと気楽にカード枚数とか増やしちゃいますからね。
―今回制作の政略結婚、この冊子は別売ですか?むしろこれを最初にみなさんにお伝えしたいです笑
冊子は別売りでっす。 以前の巻まで連続予約者や多数予約してくれた方におまけとして付属してました。今回から別売りで、以前の巻も予約とか自前通販で購入できまっす!
―なるほど、私個人としてはご購入される方には是非冊子も購入していただきたいですね
国連ペンギンとうさぎの政略結婚の誕生秘話等はありますか??うさぎはボードゲームのシステムに感化されてと拝見いたしました。
国連ペンギンは、”「円」の動きを軸としたゲーム”という自分への課題で作りました。アートワーク的に国連議員の写真資料をいっぱい探したんですが、これがまた国連色を出すのが難しく、国会と国連の差異がなかなか出ず、ひらきなおって国際色豊かにしてみました。わりと面白い絵面になりましたね。
ウサギの政略結婚は、ギロチンというちょっと古めのゲームをヒントにして現代風かつ協力ゲームに適した形に作ってみました。 一番苦戦したのはカードの数値的な調整で、いろんな人に見てもらいました。結局7~8回は作り直してようやく現在の完成バージョンです。 そして、テーマが実は今回自分でシステムを練ってる時は料理店のゲームだったのですが、折角初の協力ゲームを作るということで、もっと女性に遊んでもらえるようなテーマが良いと思い、彼女に考えてもらいました。 それで「政略結婚」と決まった時は「してやったり!」とドヤ顔全快有頂天家族だったのですが、まさか、ダイナスティとかいう同テーマが界隈に出てくるとは思いませんでした。してやられました。 マティアス・クラマーは私の永遠のライバルとなりましたんで、 そのうちランカスターより面白いワカプレを作ってやりますとも。
―政略結婚はゲーム性にもマッチしたものですね笑
ありがとうございます。
ランカスター、ダイナスティより面白いアブストラクトワープレを真面目に期待しています。
もう一つ質問です。
ショーナンさんって本気でボードゲーム作ったら8時間級をすぐ作れるんじゃないの?なんでだろ?と思っていますがいかがですか?
実は毎回長時間ゲームを作ろうとして自由に膨らませてから、ガンガン削って30分ぐらいにまとめちゃってます。そのうち削りきれない発想が出た時こそが長素間ゲームを出す時と思ってます。 ヘビーなゲームに憧れは物凄くあるのですが、なかなか自分で納得が行くところまでには至らない感じです。でもそのうち出ますよ!
楽しみにしています!!
感想
インタビューにある通り、このボードゲームを購入する予定がある方は、別冊として販売されている「うさぎの政略結婚冊子」の購入も併せてオススメ致します。
むかし「ぼくのなつやすみ」というPSソフトがあったのですが、そのCMのキャッチコピーが今でも心に染みます
。
父が息子にこう諭します。「無駄だからやめなさい」
すると少年はこう返します。「じゃあ無駄なことは世の中に必要ないことなの?」
大人になって忘れてしまったあなたにおくる。
PS「ぼくのなつやすみ」
確か「ぼくのなつやすみ2」でもそんなようなCMが流れていたと記憶します。
そしてこの冊子ですが、本編のボードゲームとはほとんど関係ないところまで、緻密に練り上げられた世界観があります。
そもそも15-30分のボードゲームに対して深い時代背景と、400年分の歴史年表が詰まっており、さらにその土地の風土から、うさぎの人体的な解体新書、各登場人物のヒューマンヒストリーまで記載があります。
読んだ後にプレイしていたらその土地の名前を覚えていました笑
写真でお見せしてしまうと内容が出てしまうので、是非会場内でご覧頂ければと思います。
今回だいたい10人程にテストプレイをお願いし、初めに冊子を見せたところ、その内容の深さに最初は軽くドン引きだったのですが、読みながら「これはすごい」と、そして「その人のボードゲームは是非やってみたい」と遊ぶ意欲がグンと高くなっておりました。
実際プレイしみて前述の通り、よく出来ている傑作であり、この価格帯が安すぎるのではないかと感じる精度の高い作品です。
「自分が納得いくまでやる職人気質」というのがありありと伝わってきます。
イメージとしてはラーメン屋の店長で「今日はスープが納得できないから休み!!」となりファンとしては致し方ないという感じ。
一つのことをこれでもかと突き詰める姿勢と、そこへ面白さがきちんと伴っているショーナンさまのボードゲーム。
この機会に「これが同人ボードゲームだ!」とも呼べそうな本作、いかがでしょうか。
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