美しいゲーム設計と対面ボードゲームの醍醐味が交差する「たまもーる」

ゲームマーケット2016秋

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製作者の想い

「新作ではないけれど、是非紹介させていただきたいボードゲームがあります。」
梟老堂さまからこのようなご連絡を頂きました。
ホームページを拝見し、話をすればするほど、優しく丁寧に製作されたであろうボードゲームへの愛を感じ、こちらから逆にお願いしたいと思い、本記事の「たまもーる」をレビューさせていただくこととなりました。

まずはじめに感じたのは、非常に精度が高く緻密に作られたボードゲームだということ。これは個人の主観ですから、「そもそもボードゲームの緻密性って何言ってんだこの人は」という疑問が湧くのは当然のことだと思われます。
しかし、この表現が非常にぴったりと、そしてしっくりくるボードゲームです。
イラストはふんわりと柔らかい、そしてなんだろう?と興味を持たせるゲームシステム。にも関わらず、飽きることのない面白み、旨味と言えば良いのでしょうか、気がつけばイラストの可愛さとは裏腹にのめり込んでいるプレイヤーたち。

本記事では製作者さまのインタビュー中心にまとめ、先ずはプレイ記をご覧頂ければと思います。

2vs2の協力ゲーム

本作の「たまもーる」の特徴は2対2の協力ゲームです。
2-4人まで愉しめますが、このシステムを堪能するためには4人推奨です。

テーマ

ここは春の風と冬の風の狭間の世界。
春のコウノトリと冬のフコウノトリは、毎年、季節のタマゴを奪い合っておりました。
このタマゴはその年の季節の長さを決めるもので、自分のところへタマゴが多ければ、その季節は長くなり、好きな季節で長く過ごせます。

三寒四温とはよく言ったもので、このトリたちが巻き起こす風のおかげで、季節はゆったりと、ときには激しく流れてゆくのでした。

トリたちが起こす風は自分たちの想い通りにいきません、遠く離れた仲間同士で、うまくたまごを移動させなければいけませんし、冬から春へたまごを移動させなければいけませんから、相手の季節を通る必要も御座います。

トリたちはめいめいによく考え、タマゴを受け渡しております。

さて、今年の冬と春。

どちらが長くなるのやら。

プレイ記

ゲームマーケット2016秋

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なるほど、ライフが減るカードを押し付け合う感じね!
んで、相手チームにライフが減るものを渡すと。

「聞いてるだけで面白そう」

とりあえず一通り説明書を読む。

「けっこうシャッフルが必要だ。これ。」

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数字カードを手札から出して、その数字分鳥カード(アイテムカード)を進める。
味方に有利になるように進めたり、相手に不利になるようにカードを進める。
但し、その効果はその手番の人の開始時なので、それまでにそのカードがお目当ての場所にとどまっているとは限らない。

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「タツマキの効果がよくわからないけれど一応使ってみる。」
あ、間違えて(味方の)すごろくさんに行ってしまった笑

タツマキは不規則な動きでプレイヤー間を周るので、予測がつかない。
そのため相手チームに不利になるようにカードを送っても、味方に届いてダメージがいってしまう。
しかも、動かすカードがないと、不利なカードを味方に送らなければならなくなる。
「じゃあ・・・2を出す。」
「えええ、そのライフ減るカード来るのおれじゃないですか笑」

「笑」

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序盤は敵チームが有利だったが、出せる手札が少なくなるにつれてうまくアイテムカードの操作が出来なくなる。

「くそー、これ出すしか無いか―」
味方へがライフを回復するカードが届く。

「おお!これは何もせずに勝つ!?笑」

「あ、そうなるとまたタツマキ来て・・・」
今度は敵チームの仲間同士でダメージを喰らい合っている。

「私何もしてません笑」
「絶対計算に入れてたでしょう笑」

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他プレイヤーに状況は操作されるために、思い通りにいかない。
しかし、場数が少なくなるに連れて出される数は残りの数からいくつか予想が尽きます
こうなると完全情報(アブストラクト)ゲームに近くなるので、ある程度操作が可能です。

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「全部黒の3なんだよなあー笑」

「123でタツマキがきて、黒がすごろくさんへ!」

「これは策士だあああああ笑」
相手チームが味方を回復しつつ、私へのダメージを与えるという動作を1ターンで行った。

「ゲ、これしか持ってない・・。」

「すごろくさんに白あげないと笑」
「きた!やったああ笑」

「これしか持ってな笑」

「生きれる!!!笑」

立て続けに私へのライフ回復カードが回ってきました。
長考する敵チーム・・・

「これが一番最善・・・」

「1減る、ごめん!」
黒を移動するか、白を移動させるか。

これが最善だなあ。

これはだめかもわからんなあ笑

沈黙

これしかない、見守るしかない。
見守りの境地だ笑

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「これしかないから・・・」

おおお!!!
いいぞ!!!

手札が少なくなり、見事味方チームの勝利!!

一同「もう一回!!!」

自分がおもしろいと思うものを作りたくて

―たまもーる、おもしろかったです。
イラストは可愛いのに中身は硬派のボードゲーム。
作成に至るきっかけはなにかあったのですか??

自分が面白いと思うゲーム像というのがあり、それを実現するために作成しました。
盤外戦術ではなく、ゲームにおける最善手がしっかりとあり、ゲームのシステムに基づいて相手との読み合いが愉しめるものです。

―「ゲーム内での意思決定を愉しむ」ですか。
はい、ゲーム内での判断を行う際ゲーム中に判断材料があり、
それを考えることで勝率が向上するしたりするもののことです。
例えば、カウンティングなどの記憶力によらず、
公開されている情報で意思決定が可能なほうがより良いと思っています。
更に言うと、その判断材料は出したカードだけではなく、他プレイヤーのゲーム中の行動、例えば「このタイミングでコレを出したってことはこいつはきっとこういう手札に違いない!」など考えることが好きなんです。
深読みし過ぎて的外れになることも多いんですが(笑)

―ボードゲームとしての対面の愉しさがあり、ただそれがシステムの上でしっかり行えるものでしょうか

そうですね、私個人として、話術などの印象操作でゲームの勝敗が変わることが苦手で、そういったゲームを敬遠してきた経緯がありました。

自分が好きなゲームをいくつか考えたところ、システムが強固で感情によって一人を貶めたりが出来ないゲーム、そして最善手(結果的にそうなった、でもOK)を打てば勝利に近づけるゲーム。
もちろんそれだけでは勝てない運の要素も必要で、ガッチガチに最善手が決まりきってるのはゲームとしてつまらないと思っています。
このバランスがちょうど良いゲーム。そういうゲームを好むことが分かりました。
例えばトリックテイキング系のゲームなんかは条件にあうものが多いです。

―すごいですね。プレイした後に思ったのですが、まさにお話されたとおりのプレイ感と面白さでした。
このシステム、タツマキがナイスゲームバランサーとして機能していると感じました。
この素敵なシステムを発案したきっかけはありますか。

あまりご期待に沿えないかもなんですが、
タツマキはシステムが出来たら自然に出来たものです。

ダメージと関係ない特殊能力のみのを作ろうという話はすぐに出ました。
更に、能力はSkip にしよう、というのも最初から決まっていました。
これは、ゲーム内のパラメタで、たまご(ダメージ)以外の要素が
ターンそのもの、手札のカード、ぐらいしかなかったためです。

例えば、片方の色で動くよりも両方の色で動くこともありました。

しかし、ここで数度テストプレイしたところ、同じ方向で回ると
鳥と一緒に回ってしまって面白みに欠ける、となりました

既にアイデアとしてあった、逆回りキャラのルールを適用し、かなり多くのテストプレイを重ねると特定の人のところで発動することが多い傾向になることが分かりました。

そこでいくつか思案したもの(逆回りと1/2で端数切り上げ、切捨てで行ったり、引いたり捨てさせたり)を何度も試し、今のたまもーるの「タツマキ」になりました。

―ところで、たまもーるはいつごろ発売されたのでしょうか。

GM2014秋、結構前のゲームですね・・・、リメイクのWolf & HoundはGM2016年春です。

―たまもーる、それでは2014年より前、もしくはそれよりずっと前に考えていたものなのでしょうか?

ちょっと長くなる、かつマニアックすぎて分かりづらいので
適当に端折ってください。
(端折りませんでした笑)
実は最初の思いつきはゲームセンターでゲームをしていた時でした。
私アーケードゲームが大好きで、特に格闘ゲームで良く遊んでいます。

すっごい古いゲーム(1997年)なのですが、ヴァンパイアセイヴァーというゲームがあり
レイレイというキョンシーのキャラクターの技に爆弾を投げる技があるんです。

この爆弾、タイムカウントが減っていって0になると爆発します。
良ければこの動画をご覧ください。

で、動画では分からないのですが
そしてこの爆発にまきこまれると両方のプレイヤーともダメージを食らうんです。
更に、この爆弾に技を当てるとポコポコバウンドして相手側に押しやれるんですね。
要は通常のゲームをしながら、更に 「爆弾を押し付けあう」 わけです。

そしてここで 「あー、これってゲームになるなー」 って思った、というのが
一番最初のきっかけです。
もうお気づきでしょうが、爆弾=黒鳥(フコウノトリ) なんです。

―なるほど、「押し付け合う」というのがきっかけだったんですね。
確かにそのコンセプトはおもしろそうです。

「爆弾の押し付け合い」 という基本コンセプトから色々と試しました。

全員対戦形式で生き残りプレイヤーの勝ちだったり、
別にボードを作ってそこを移動させたり。(椅子取りゲームみたいな感じですね)
最初は爆弾のタイムカウントが減って、0になったときに持っているプレイヤーが
ダメージだったんですよ(笑)
最後の数ターンしか意味がなくってゲームになってませんでしたが(笑)

最終的にはチーム戦になり、発動タイミングを時限ではなく、
条件として設定することで、その部分を調整することがゲームになりました。
実は途中段階では完全な協力ゲーになったこともあります。
誰も死なないように爆弾が爆発するときに誰もいないようにしろ!とか。
フレーバーを変えて回りをぐるぐる回りながら魔王を倒すとかもいいなぁと。
別ゲーとして出そうかと思ってたら、似ているゲームが出てきたためにしばらく寝かせておこうと考えています(笑)
制作段階で相当な苦労があったかと思いますが、どの辺が一番気を使いましたか
白黒の数字枚数配分には相当気を使いました。
直感的に現状の枚数ぐらいがちょうどいいとは思っていたのですが
確信を持つために、相当な数(100回ぐらい?)プレイしました。

初手番の有利不利は全数パターン出して解析しました。
(添付の表を頂きました。すごい量の計測値です)

各数字について自分の中では、4がお気に入りです。
白黒ともに一見ただのパスカードである 「4」 が1/2移動カードが
入ったときに違った動きをするところが気に入っています。

―すごい量のテストプレイとゲームデザインが今の「たまもーる」を生んだんですね。
お話ありがとうございました!

感想

ボードゲームをどうして作るんですか?
こういった投げかけは野暮ですが、これには酒すごろくとしてちょとした理由があります。
そもそも、ボードゲームを作る理由なんていうのは十中八九、「自由だから」であり、「その自由をなぜ形にしたのか」が重要です。
私の質問力のなさかもしれません。しかし、「あなたはなぜ自由を?」と聞くとなんだか少しテイストが異なる質問になるますから、一周回ってこの質問に行き着きます。

今回の梟老堂さまの「自由」とは、「自分がおもしろいと思うものを作りたい」でした。
私は今回「ボードゲームの自由とはなんだろう」という思いに行き着きました。
自由度が高ければそれが良いというわけではありませんし、かといってガチガチに縛られたルールでは同じことを行うプレイにしかなりません。

この「たまもーる」はそんな程よい中間にいて、だからこそ何度も愉しめる、そんなボードゲームです。

これは決して中途半端ではなく、美しく整えられたバランスです。
そのバランスをゲームの中でプレイヤーが愉しさへと変貌させる、それこそがこの「たまもーる」の醍醐味なのかもしれません。

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