世知辛い海の上でしっとりとした商戦と暴落する株式「塩辛い海の上で/Upon a Salty Ocean」

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  • 7/10
    運 - 7/10
  • 8/10
    戦略性 - 8/10
  • 8/10
    コンポーネント - 8/10
  • 8/10
    テーマ性 - 8/10
  • 8/10
    インタラクション - 8/10
  • 2/10
    プレイアビリティ - 2/10
  • 7/10
    プレイ頻度 - 7/10
6.9/10

抜粋のみを表示

実プレイ時間:120分(インストは別途20分)
プレイ人数:2-4人
推奨プレイ人数:4人
お気に入り度:
お酒との相性:
難易度:Lv.4
日本語化:不要
発売年:2011
ゲームデザイン:Marco Pranzo
想定価格:5000円

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はじめに

塩辛が好きです。

塩辛って実はライムやレモン、オリーブオイルとクリームで味付けすると魚介風のクリームソースパスタに代用できて美味しいんですよ。濃厚でさっぱりとした美味しさ。
ライムが臭さを消して香りよく、甘さと旨味だけを舌の上で味わえます。うまいんだなあ。

このボードゲームはそんな美味しくありません。
苦虫を噛み潰した表情で、お互いの動向を血眼で見つめ合うボードゲームです。息が荒くなります。過呼吸になりそう。辛い。

この間のブロガーの呑み会では「酒すごろくさんってメジャーなものを紹介されていないですよね」から始まり「国内で流通していないものでオススメは!?」と皆さんから色々とご質問を受けました。

とまとのボドゲさんぽのトマトさんからは「特にアブストラクト傾向で渋いものを教えて!」と言われましたから今回レビューするソルティーオーシャンをお薦めしました。

塩辛い海の上で繰り広げられるのは胸が圧迫されるようなリソースマネージメントゲームです。
全てが早い者勝ちで行われ、得点源はカットしやすいものばかり。あはあ。
あとは金0になればエンド。本当に何も出来ない。
でも好きなんです。このプレイ感は悪くない。だっておもしろいから。

春先で何か新しいことにチャレンジしたいボードゲーム初心者の方も多いでしょう。

そんな時はこのソルティーオーシャンをプレイさせ、獅子の子落としの如く一人前のボードゲーマーに育てて下さい。

ここがおもしろい

  • 色が地味で視認性が悪い
  • 借金すれば大金を手にするが、失敗すれば復帰不可能
  • お互いのアクションを終始把握する必要がある
  • 辛い
  • けれどそこがおもしろい

 

システム

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塩を船に突っ込んで漁に出て、沖合で魚を塩漬けにして売却するゲームです。
どっかの優等生ロンデルのように長崎行かなくても勝てるように、こちらも魚関係なく勝てることがあります。

このゲームは5ラウンド3フェイズで構成されています。
1.イベント
2.アクション
3.ターン終了

フェイズ1 イベントの反映

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開始時にイベントと市場価格の変動が行われます。

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カード5枚が裏向きにあり1枚目を表にしてそのラウンドに反映させます。

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白駒の塩と桃駒のニシン、紫駒のタラの価格が変動されます。
この時注意しなければこの変動を今のラウンドに反映させた後、次ラウンドのイベントカードも表にします。

これにより、次ラウンドの市場価格の予想を立てつつ商品の精算や売買を行います。
また、ニシンを取るときに嵐・海賊・不漁などのイベントに見舞われる場合があります。

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これはそのラウンドに漁に出る船が対象なので、既に漁に出ている船に影響は及びません。
次ラウンドで嵐が発生するからこのラウンドに船を出航させておこう、などの戦略が立てられます。

フェイズ2 アクションの実行

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プレイヤーはアクションを1つ実行するかソフトパスを宣言します。
アクションは(町・航海・港・市場)4種類から選ぶのですが、それぞれにコストが掛かり、このコストがこのボードゲームの「重さ」の象徴と言っても良いでしょう。

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コスト変動性のアクションで、初めは0金なのですが次は1金、次は2金が必要となり、多くのプレイヤーが同じアクションを選択すればするほど費用が嵩みます。
そのため0金アクションについては早い者勝ちなのですが、それよりも航海アクションを安いうちに行っていきたいのでこちらが極端に費用が掛かったりなど、「いつ誰がどのタイミングでどのアクションをやるか」が非常に重要となります。

「町アクションは0金で実行できるけれど、航海アクションを実行されると利益が出なくなるから早めに実行しておかなければ・・・!!」
と思う方もいる反面
「他のプレイヤーが航海を選択しそうだからコストが安い町アクションを早めに行って、このラウンドはこっちで稼ごう!」
など、金銭(コスト)が絡むと読み合いが凄まじいです笑

アクションが10金に到達した場合はそれ以上伸びることはありません。
しかし10金アクションを何度も行うかと言えばまあ無理です笑

このボードゲームの「辛さ」はこれだけに留まりません。

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コストを支払えなければ借金をすることが出来るのですが、借金トラックに入った瞬間即座に利子が1金発生します。
ラウンド終了時にまだ借金トラックに停滞している場合はさらに利子が必要です。

これが「辛い」
きちんと資源を確保しておかなければ借金を背負ってもその借金トラックから抜け出せず、さらに借金を重ねることになる・・・。
しかしながら限界まで借金をしてもスタートプレイヤーは所持金の少ないプレイヤーからになるので、0金で売れるのですが他プレイヤーも同様のことを考えているのでなかなか難しい。

下手をすれば普通に詰み状態になり、残りのラウンドを何もせずに過ごさなければならないことも。
かなーり重く辛い。でも面白い。この緊張感がたまりません(ヤバイ)。

さて、どのように稼ぐか、勝利点を獲得するのか重要なアクションについて説明していきましょう。

航海

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外洋への航海と漁を行います。
通常のプレイスタイルではメインとなる収入源ですね。
プレイヤーは自分の船タイル1~3枚を港から外洋へと移動させて船にある塩を魚へと交換します。塩の数に応じてニシンとタラの比率を自由に分けることが可能です。

次の相場がどのように変動するのかを予見しながら交換していきます。
一度に1-3隻までの船が移動出来ますから、一気に塩をのせて一気に売りに出したいところ。
しかしながらイベントカードには海賊や荒波なんかのアクシデントもあるので、イベントカードが分かるうちに、早めに済ませておきたい心情でもあります。

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造船と積み荷の移動のどちらかが行なえます。
船を建造する場合は海軍兵学校と造船所の町アクションを誰かが行った後でなければなりません。
海軍兵学校と造船所の町アクションを行った後だとそのアクションを実行したプレイヤーが不利になりそうですが、その町アクションを行ったプレイヤーに対して、船を建造するプレイヤーはお金を支払わければならないので初めの資金調達には最適です。

また積荷の移動もこちらのアクションで行います。
最初は上限6個まで倉庫に保存出来ますが、町アクションで15個まで増やせます。

P3114407.JPG 船に載せるにも上限数があるので、一気に漁に出る場合は
1.倉庫を拡張
2.塩の定期収入を町アクションで増やす
3.船を造船する
4.積荷を移動させる
5.漁に出る

とこのように最低でも5手番が必要となり、相場も変動するしアクションコストも増えるし「そんなことして間に合うの??…..」という空気が漂います笑
つらーい!笑

市場

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こちらのアクションで資源を売却出来ます。
イベントカードにある相場で資源を売却し、売却時は8個以内であれば相場が1段階下がりそれ以上であれば相場が2段階下がります。

このように、誰が何を持っていて何を売りそうなのかがかなーり重要であり「ニシン上がるけれど初手番ニシン売るよねー・・・」とか考えながらプレイしていきます。

また、市場からの購入も可能です。
その時の相場の値段で買うのですが、次の相場が下がらず上がりそうだと予見できればここで巧くお金を稼ぐことも出来そうですね。
ちなみに塩が0金になることがあるのですが、1金として購入することが可能です。

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いっぱいアクションがあります笑
町アクションはプレイヤーキューブを置いて実行しますが、まあ早いもの勝ちのものが多いです。ここも壮絶なインタラクションが起こります。

主に重要な(ほとんどですが)町アクションを紹介します。

銀行

実は最初の所持金の上限は40金までなんです。これも重苦しい笑
(プレイ中は越えても良いのですがラウンド終了時に上限まで減らされます)
それを上限80金ばで伸ばして20金毎に1金の利子がもらえるというアクションです・。

大聖堂

大聖堂を建築後に町アクションでこの大聖堂を選ぶ度に、大聖堂トラックを1マス進める事ができます。ゲーム終了時に建築した回数に応じてボーナス得点を得られ、最高70点。しかし、このボーナス点も早い者勝ちのためにギスギスで血で血を洗うようなアクションが繰り広げられます。
内容だけ見ると強そうですが、これを行わなくとも勝てるプレイヤーもいらっしゃるのでこのボードゲームは一筋縄にはいきませんね。

聖ロマン教会

このアクションを最初に実行したプレイヤーはイベントタイルを2枚見ることができ、さらに不漁のイベントを受けなくなります。
船で稼ぐのであればこちらは協力なアクションとなりますが、2人まで。
さらに2人目は1枚までしか見る事ができません。ぐぬぬ。

他にも船を建造したり、毎収入である塩を増やしたり、前述の倉庫を拡張したりなどなど、ほとんど早いもの勝ちの全14種類の豊富な町アクションです。
どれも痲れるようなインタラクションを味わえるものばかり。インストも辛い!笑

全てのプレイヤーが連続でパスしたときにアクションフェイズは終了します。

フェイズ3 ターン終了

最後に定期収入の塩を各プレイヤーの定められた数分増やしたり、宿屋の賃料を発生させたり、利息を貰ったり・・・調整を行いターン終了です。
先程お伝えした借金もここで加算されます。苦しいよお。

ターン終了時に重要なのはディスクの上に重なったプレイヤーからスタートということです。つまり、22借金が最低ですが、21借金に留めてターン終了の追加利子処理で22金にして22金に置いてあるプレイヤーの上に自分のカラーのディスクを置いてスタートを先取するというプレイがあります。

そのためオーバー22金(の下のディスク)にしてしまうと、アクションも出来ないというラウンドが実際発生します。

ゲーム終了

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全5ラウンドが終了し、ボーナス得点を加点して勝利点(金)が一番多いプレイヤーの勝利です。

感想

ギリギリのチキンレースが非常に塩辛く良い。
しかし、借金を1度だけ行っただけで、後は市場アクションで巧く売り買いを行って得点を伸ばすプレイスタイルも大いに有り得ます。
単純に多く借金をしてどんぶり勘定に大金を得る、というわけではないところがリプレイ欲を掻き立てられるのです。

昨今のボードゲームは非常に優秀です。
何が優秀かと言えば、最後までプレイを諦めさせない工夫によるものです。

例えばコンコルディアのように得点を複雑化させたり、ガイアプロイジェクトのように手詰まり感を失くしたり、しかしどれも結局は実力差で勝敗が決まるようなシステム作り。見事です。

しかしながら、このような重くて苦しいゲームはおもしろくないのか?と言われれば決してそうではありません。
「何がどうして負けたのか」という内容がボヤケずにしっかりと分かり、人によってはさらに再戦したい気持ちを与えてくれます。

このボードゲームは資金運用が直接の勝利点であり、運要素は少なく、さらにプレイヤーによるインタラクションが非常に強いボードゲームです。

好き嫌いは分かれるかもしれませんが、このようなボードゲームの存在が他のボードゲームの魅力を引き立ててくれるのでしょう。

2018/03/27
Amazonにて日本語マニュアル付きで販売されているようです。
マニアックなボードゲームのため国内ではあまり流通しておりません笑

Amazonより安い価格(中古のボードゲームや新品等)で売っていることもある駿河屋にもあるかもしれません。ホビー/グッズ販売 通販ショップの駿河屋

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