トム・ハンクス&ダリル・ハンナ主演の「スプラッシュ」がリメイクという噂が出た頃、真っ先にこれがそのリメイクなのかと想像したがこれはオマージュのようだ。
以下は超ネタバレとあまり肯定的なレビューではないため注意。
あらすじ
1970年 西海岸アメリカ
掃除係で声の出ない女性が、職場の研究施設の半魚人の彼と恋をする物語。
半魚人の彼と出会うことで色も形もない毎日が艶やかになっていく。
しかし、監査を行う白人男性はその半魚人に噛まれたことから知性のない動物だと評して拷問を与える。
彼を研究施設から逃し、彼との性を含めた生活を手に入れる。
しかし、彼のカラダは弱まり海へと逃す決意をした。
ラストでは彼の力により銃弾の攻撃を回復させ、傷を負った彼女とともに海へと消える。
寸表
下手をしたらエログロの超絶B級映画になりがちな映画を巧く調理している。
ハリウッドスタイルの恋愛サクセスストーリーにクリーチャーをぶん投げつつ、形がある障害と目に見えない障害という難題をミキサーにぶち込んで一気に作り上げたらものすごく美味しくて驚く、という感じだ。
人のことは言えないが俗に言われているサブカル大好き女子には真っ向から胸をつかむロマンスが溢れ、かと言って王道を良い意味で薄汚れた演出に仕立て上げたのは監督ギルモアデルトロのなし得る技だろう。「優しくて強い半魚人が好き!世の男はダメ!」
これはもうサブカル大好き女子たちにどストレートな映画だ。
全て色を固定してセピア調で表現しつつ、甘美で艶やか、かと言って王道を貫かず”外す”工夫が随所に見られる。
アカデミー作品賞
しかし殿方にはあまりウケはないだろう。
なぜなら異様とも言えるほどの痛烈な白人至上主義への批判と女尊男卑をキャラクターに根付かせ、さらにルッキズムをけちょんけちょんにしている。というか殺してる。
白人男性への典型とも言える暴力的な側面と知性への反感をこれでもかと映像とSTORYで誇張させ、さらに言ってしまえば全ての男性は裏切り役に立たず、ダメな烙印だけ押し付けてスタッフロールを流す。
偏見と差別を打ち砕く映画だと絶賛されているようだけれど、私は偏見と差別でしか対抗が出来ないのか?と首を傾げて眉をひそめてしまった。
海外のホームドラマでよく出るヒステリックな女性をこれでもかと際だたせるのと似た、いやーな感じだ。
巷ではLGBTを全肯定してくれる傑作!と言われているがどこもよく見ればアカデミーを取った後の評価。まさに虎の威を借るキツネである。
せめて「ボーイズ・ドント・クライ」ぐらいは観てからにして欲しい。
正直に言うと巷の評判とは逆で、アカデミー賞最多で作品賞を取るレベルだとは思えなかった。
昨今監督から話題が上がったハリウッド映画関係者のセクハラ問題が追い風だったのだろうか。セクハラ被害者向け法的支援を行う団体やセクハラやジェンダー論を強く主張する方などバックアップあってこそ「シェイプ・オブ・ウォーター」は受賞できのかと穿った見方をしてしまうほどだ。
数年後、アカデミー賞の名作として誰もが見るかと問われれば、首を横に振る他ない。
しかし、もしアカデミー賞を獲らなければ、伝説級の傑作サブカルB級映画として多くの人に支持されただろう。
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