春蚓秋蛇のひととせに、木に餅が成ることを疑えよ「四季折折」

和菓子タイルをみんなで協力しながら集めていきます。みんなのおかげで高得点が必ず狙える!これだけ聞くと協力ゲームかと言えば、いいえ、すっごく楽しい謙虚型パーティーゲームです。

2019年春 ゲムマ新作 ボードゲーム「四季折折」のレビューや感想、製作者(デザイナー)へのインタビューです。

デザインななつむ
イラストななつむ
人数3~6人
時間15~30分
年齢8歳~
価格2500円
発売・ブース2019春 土-T11 体験卓あり
予約https://bit.ly/2Vncmno

はじめに

じゃあこうしよう、ああしよう、これはいい、こうかもしれない。
なんとなく繰り広げられるボードゲームの独り言のような会話。

もちろんその独り言の「会話」に「こうすれば良いんじゃないのか?」なんて言うのは野暮でありご法度。
うーん、なるほどねーなんて相槌をすることはあるかもしれない。

しかし、このボードゲームは違う。
相手に得点を与えることがこのボードゲームの本質であり、もはや今までの常識を逸脱した考え、着想のもとで行われる。

このボードゲームは相手に得点させるのだ。
「これあげれば追加点ボーナスもらえるね!!」と無邪気な笑顔で相手に言うことが出来るのだ。
しかし、実際には一番点数の低いプレイヤーが「謙虚さ」が高いとして勝利する笑

もはやこの説明では意味がわからないだろう笑

この「はじめに」を書いている間も始終ニヤニヤが止まらない笑

普通であればヘイト管理ゲーと化すこのゲームは、しつこいほど「相手に得点を差し上げる」ということを推し進めてくるもんだから、もうなんだかキレイにまとまってそんな雰囲気にのまれちゃう笑

「ほらほら、これで四季が揃いますよ♪」なんて言いながら無理やり相手を得点化させる笑

相手に嫌なことを押し付けるという嫌な本質のゲームなのに、なんでこんなに笑いが止まらないのか不思議でしょうがない笑

それはこのアートワークの美しさ、ストレスフリーなタイル、説明書、何から何まで洗練されているからかもしれないし、ギズギズにならないのが本当に不思議で、すごい(語彙力)。

説明書でいろいろと言った後に「んで、こうすれば得点になるんですね!そして、得点が一番低いプレイヤーの勝利ですよん!!」って言うと「え!??おいいいいい笑
どういうこと???」みたいな笑

まあとにかく面白い笑

おっと、「まえがき」が「感想」までに至ってしまっている笑

それではシステムについて説明していきましょう。

システム

72種の和菓子タイルを3✕3の計9枚で並べます。
並べ終えたら色々とあるボーナスを足し合わせて「最も得点の低いプレイヤー」が「謙虚さがある」として勝利(?)します笑

担当の四季の配布

先ず最初にプレイヤーは担当する四季カードをランダムに受け取ります。
表面はサマリーになっており分かりやすくて良いですね。
最後に自分の担当する四季を公表するのですが、そのときもこちらのカードが得点計算にも使えるという配慮ぶり。
無駄のないゲームです。

この担当する四季についてですが、最後まで相手に見えないように伏せます。
例えば自分が春だとして春の和菓子を獲得するごとに+1の加点が入ります。
相手も四季が何か分からないので、加点しづらいです。粋ですね~笑

四季タイルの選択

次に3箇所から四季タイルを一つ自分で選び、自分の折り箱エリア(3✕3が形成される)に置きます。
わざと自分の担当の季節をとっても良いのですが、同じ季節を揃えるとボーナスになるものもあるので、自分の四季は隠せてもそのボーナスが狙われたりもするので気をつけましょう笑

おそそわけ

後はスタートプレイヤーから3箇所の山札から一番上の1枚を選んで、他プレイヤーに渡します。
いやーこれが楽しい笑

「おやおや、○さんはこのお菓子があると紋章が揃ってキレイですね。」
なんて言いながら相手プレイヤーがボーナスを達成するように渡していきます。

女性同士でやると「え~!!笑じゃあアタシもこれ差し上げますね笑」みたいな感じで「これも可愛いかも!」とか割とトントン拍子に進むのですが、男性同士だと全員オカマになります笑
「あら~足りないじゃないー」
「あらやだわ、ありがと~」
「あらら~(全員)笑」

みたいな、なんという地獄絵図でしょうか笑

お茶くみ

このゲームでさらに面白いのは「お茶飲み」というアクションが行えるところです。
お茶くみのマーカーを取ると、そのプレイヤーの手番になるまでタイルを渡すことが出来ません。

新しいタイルがめくられるとみんなざっと誰がボーナスになりやすいか見渡すんですが、「あ!」君の名は!?みたいなときがあって、「これとこれでこのボーナスにこの人なる」って気づくスピードがみんな同じものだから、無言でさっとお茶くみを取るみたいな笑

渡されるタイルとお茶くみが同じタイミングでも、お茶くみを優先するというのはきちんとルールに明記されていて良いです笑

ゲーム終了

もし先にタイルが埋まった場合は自分の四季を公開します。

ほか誰がどの四季を担当しているかなんとなーくわかったり笑

全員のタイルが埋まれば得点計算です。
みんなの協力(憎しみ)で集まったタイルのボーナスを計算します。

ボーナスは全部で5種類、1種類ずつ行い、「得点が一番低い」プレイヤーの勝利です笑

感想

いやー面白い!分かりやすいアートワークも美しく、楽しめる。それでいて2500円!?どういうこと??

すべてにおいて洗練されているし、多人数で出来るのも良いですね。

注意点は、オープン会で全く知らない人同士は厳しいかもしれません。
全員が知り合いで意地悪して笑える仲間とやるのがお薦めですね。

そういう環境作り、インストができれば問題ありません笑

売り切れ必須予言しちゃいます。

インタビュー

パーティーゲームとして素晴らしいの一言に尽きるボードゲームでした。
基本的に私のレビューは私の主観であり辛口ですが、これはもう重箱の隅をいくら突いても塵も埃も出ず、美しい和菓子の香りが立つだけでした。

1.先ずは四季折々に和菓子を採用した理由とその和菓子を選定した理由を教えて頂けますか。

私の場合、ゲーム制作は見知らぬ土地を歩いて様々なモノやコトを見聞きすることから始まります。
四季折折のキッカケは、東京から遠く離れたある田舎のデパ地下です。豪華な折箱と出会い、その華やかさを表現するゲームってどんなんだろう?と帰りの新幹線でずっと考えていました。
メンバーの一人がお箏の先生で和の世界に深いことから、和菓子を美しく表現できるのではと考え、和菓子を題材としたゲーム作りが始まったのです。

和菓子は季節感が出るようなもの、見て楽しいものを中心に選んでいます。桜、笹、銀杏、雪結晶。四季折折の世界です。


2.本来であれば押し付けあいを行うプレイングが、コンポーネント、説明書の言葉の端々を丁寧にあしらい和やかにする等、得点化することを前向きに誘導しているため、単純なヘイト管理ゲームにならず、誰しもが楽しめるゲームとなっており、これは本当に見事としか言いようがありません。 例えば基礎点50点から「-(マイナス)」で行われていくというもの、等も考えられます。このようにアートワークデザインされた経緯や裏話を教えて頂けませんか。

商品がふと目に留まった瞬間から、箱を開ける瞬間、何度か遊んで戦略がわかっきてきた瞬間、みんなにそのゲームを薦める瞬間まで一貫した世界観が提供できるように心がけました。
「謙虚なお茶会、おもてなし」という世界観を、「オシャレ可愛い」でラッピングしています。

ちなみに裏話としては、途中でコンセプトがぶれて、「師匠が和菓子屋の後継者を決めようとしているが、みんなが後継者になりたくないので美しい菓子折を押し付け合う」というストーリーになりかけたこともありました。
結局テストプレイなどを経て「謙虚なお茶会」に戻ったのですが、平和な世界で本当に良かったです(笑)

3.謙虚なお茶会になってよかったです笑
それではシステムについてこだわった点についても教えて下さい。

一つは意外性です。「タイル配置ゲームで点数を競うのに、自分のスペースにタイルを配置できない」というアイデアが起点です。
四季折折の世界観は、「謙虚なお茶会、おもてなし」です。「負けたのに、美しい菓子折ができて嬉しい」という感想をもらえることが、このゲームの大きな特徴です。

もう一つはシンプルさです。一度きりのお茶くみを除けば、四季折折では3×3の折箱に和菓子を置く以外のアクションはありません。
誰でもわかるルールだけれども、考えるほどアクションが悩ましい。そんなプレイ感を目指しました。

4.四季折々で一番好きなお菓子は何でしょうか。私は「金魚すくい」が好きです笑

「金魚すくい」、夏らしくていいですね!
私は「いちご大福」が一押しです。
可愛くて馴染み深いお菓子だと思っています。納得いくまで何度も書き直した思い出も…。
四季折折の箱詰めの際にも、おやつとして大活躍していました。

5.プレイ人数が6人まででしたが、5人がベストなのかな?とも思いました。しかし、6人であれば得点も分散するためこれはこれでアリな気も致します。 込み入った話かもしれませんがこのプレイ人数について良ければ教えて下さい。

おっしゃる通り、5人ゲームを目指して作り始めました。

6人では、置き場所の選択肢が多いこと、60枚の和菓子がほぼすべて使われることから最適な和菓子を配置しやすいです。
3人では、「好きな季節」が初めから2択に絞り込まれるのでおおよそ予想がついている、でも明らかにすると自分の「好きな季節」もばれてしまうというジレンマが高まります。
4~5人は、バランスのとれたゲームです。
プレイ人数によって少し違う楽しみ方ができることも、四季折折の良さかと思います。

6.若干の反射神経、アクションの要素が茶瓶にあり、これまた面白い!この少し、わずか、という加減が絶妙です。初めからアクション要素にする予定だったのでしょうか?

お茶くみがないルールでテストプレイを進めながら、ゲームバランスを鑑みて少しだけ自助努力の要素を高めようと考えました。
一定期間は和菓子を置かせないというルールを検討し、どう世界観に組み込もうかと考えたとき、「お茶くみ」をしている姿が突然思い浮かびました。というのも、日常生活でも周りの様子を伺いながら空気をよんでそっと離れる、みたいなことがよくありますよね。
お茶くみのアクションは、「最適な配置をみんなと相談したいけど、もたもたしているとお茶が置かれてしまう」というドキドキ感を生み出し、とても好評でした。

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