建築と強襲の狭間で何を想う「公国のペレストロイカ」

建国と資源の獲得を各シナリオごとに戦略を練るボードゲームです。2019年春の ゲームマーケット 植民地戦争+α 様の新作となります。

デザイン千夜一葉
イラスト猫転餅
人数2~3人
時間20~40分
年齢10歳~
価格3500円
発売2019春
予約https://forms.gle/MNx8a6JnzjvM6j5W6

ストーリー

すべてが焼き払われ、愛する家族を失い、途方に暮れた者が居た。

森を燃やし、そこに灰を散らせ、土地を肥沃させることが彼の仕事であった。

今まで彼が奪ってきたこととさも同じように、幼子の命から、築き上げてきた富まで、すべて灰と化した。

彼のすぐ隣には、目を凛とさせた少年が居る。

その少年は彼の親友の息子にあたるのだが、しっかりと地に足を向け、新たな土地を踏みしめている。

「生きろ」とその少年は父に言われた。

少年を突き動かしているのは復讐心などではない。

まだ生き残った少年の友人と、その家族に、彼は感謝し、前を向いていた。

「この土地は未だ生きている。」

そう呟くと、彼はその少年の手を力強く握り返し、彼もまた力強く前へと進んだ。

神の加護がもしあるのなら、私はこの国は再建しよう。

すべての命を燃やし尽くし、灰になろうとも。

はじめに

皆さんはゲムマで何を理由に購入されるでしょうか。
デザイナー、ジャケ買い、運命の出逢い、様々かと思われます。

特にデザイナーや製作者でお選びになられる方が多いのではないでしょうか。
何を購入しても外れがない、一定の面白さを長年提供して下さるという方々であればデザイナーで選ぶというのは多そうです。

今回ご紹介する植民地戦争+α様もそういったデザイナーでしょう。
ローマの力を、もっとローマの力を、神話のくに、と今まですべてのゲームをプレイして参りましたがどれも安定した面白さがあります。
また、創意工夫を凝らしたシステムとコンポーネントで毎回違う楽しみを私達に与えてくれます。

そんな植民地戦争様の新作「公国のペレストロイカ」は初めはただ面白いという感想だけでした。
もちろんつまらないわけではないのですが、なんとなく楽しさがぼやけているようなそんな感じ。

それもそのはず、このボードゲームの良さは「シナリオ」にあります。

そんな「公国のペレストロイカ」のシステムについて先ずは紹介していきましょう。

システム

手札にあるアクションカードをプレイして、それぞれの自国を発展させていきます。
もうこれだけで楽しそうですね笑
そして資材を手に入れたり指定された建築物を建築して得点を獲得します。
参加プレイヤー人数に応じたラウンド数が終わればゲーム終了で得点が一番多いプレイヤーの勝利です。

カードの獲得

さて、獲得するカードについてですが、皆さんはオーマイグーッズはご存知でしょうか。

オーマイグーッズは山札からカードを1枚ずつ表にしていき、太陽のマークが3個出たらそこにあるカードをみんなで自由に使えるというものです。

公国のペレストロイカも同様に十字架のマークが有り、これらが3枚目(プレイ人数によって差が有)になればカードをめくるのを止めます。

但しオーマイグーッズと異なるのは十字架マークが出たほうが良いということ。

例えば十字架マークが出ないで最大数の5枚まで出るとどうなるかと言えば、たくさんのアクションカードが引けますが、タタール族の侵攻が勃発し、今まで蓄えてきた自国の資源を全プレイヤーがすべて奪われます。

元々土地も豊かなものではなく、焼き畑を中心に農作が行われてきた大地でした。
今回のテーマではタタールの侵略後の再建ですから、貧しいところか一つずつ欲を張らずに再建するに越したことはありません。

アクションカード

さて、アクションカードを全プレイヤーが引き終えたら、手元のアクションカードをスタートプレイヤーごとにプレイしていきます。

使えるアクションカードは2枚までとなり、2枚までは次のラウンドで持ち越すことが可能です。

カードは16種20枚なので、誰が何を使用したかは非常に分かりやすいです。

すべての山札が尽きて、引けなくなったときにリシャッフルが入りますので何が捨てられてリシャッフルが入るかも戦略として重要です。

さて、このアクションカード1枚には上下で2種類の効果があり、上下どちらのアクションを実行するか選びます。

それは建築と資源の獲得です。

資源の獲得を選べば毛皮、麦、木材とそれぞれ最大6個まで保管することが出来ます。
しかしこれらはタタールの侵攻が起きた場合、全て2個になるまで消滅します。

そして建築はそれらの資源を使い自国の建築エリアにカードに指定された建築物を建造して得点化します。
建築は本当の木材を利用して置いていくので組み立てをすることの愉しさがあります。
また、アクションカードにはその建築とその建築に欲しい資源が同じカードに記載されており、その資源を獲得するためには、その目的カードを一旦消費して再度獲得しなければならないというジレンマがあります。

これはどうやらあの天才ショーナンさんのゲームから着想を得たようですね。
詳しくはインタビューを御覧ください。

また、ドラフト式なので相手が目的としているカードが分かりやすくアクションカードをカットすることも容易です。

それではカットされたり同一の建築を目指したら手番が遅くなるかと言われればそれも違います。

実は資源を等価で交換するカードや、他人から資源を奪うカード、特定の資源を持っているだけで得点化するカード等もあるので戦略をすぐさま方向転換することが出来ます。
また建築には計9個の資源を必要とするものもあり、このアクションカードの資源獲得表記はあまり強いものではないのでアクションカード自体で他プレイヤーからカットは起こりにくく、ロマンを狙えます。

このあたりのバランス設計はお見事。

ゲーム終了?

リシャッフルがプレイヤーごとの規定数行われた時点でゲームは終了し、得点計算を行います。
建築エリアの建築物でより高い得点のプレイヤーが建国を成功させたとして勝利します。

さて、前述の通り実は初めのプレイではこれだけ?と感じました。

なんというか、面白いには面白いのですが終わった後の「こうしたかった~」や「ああやればもっと得点伸ばせたかも!」というのがない。

それもそのはず。

このゲームはシナリオがメイン!!

例えば今まで相互干渉が少ない、もっとタタールの侵攻を感じたい!というのであれば「諸公の闘争」というシナリオをお勧めします。

これは資源を一番多く保持しているプレイヤーが、資源が一番少ないプレイヤーから奪うというものです笑

しかし、これはタタールの侵攻前に行われるので、しっかりと資源を使い切るというのも有り!!

他にもインタラクションバリバリ、建築しまくりのルーシの継承者等等もあり、このあたりはかなり強いやりこみ要素です。

ゲーム自体も予想よりも遥かに短時間に終わりますので、初回プレイはインストとして笑

シナリオを追加してからが、公国のペレストロイカは本番ですよ。

ソロプレイで得点を伸ばしていくのも熱い!!コモノさん見てますか~??笑

感想

失礼かもしれませんが、この積木が本当にゲムマっぽい。
オリジナルコンポーネントと言えば良いのでしょうか。
そのおかげでこんなにもお求めやすい価格で遊べるのはデザイナー様に感謝ですよ。
しかもこのゲーム、一度遊んでもWEBシナリオ版から追加で遊べるという、なにこれ無限に遊べる?笑
WEB版が更新されればずっと遊べます。なんだこれすごくないですか笑

宝石の煌めきが好きな方には勧められる作品で、シナリオはまさに宝石の煌めきの拡張のようなプレイ感と言えば伝わりやすいかもしれません。

そうそう、植民地戦争様の作品はこの良い意味で手作り感あふれるコンポーネントのため、数に限りがあります。おはやめの予約が吉ですよ!!

インタビュー

ローマの力、もっとローマの力、神倭のくになどを遊ばせて頂き、今回の公国のペレストイカはとてもシンプルで奥行きのあるものでした。

先ずは毎回非常に強い歴史的背景のこだわりを毎回感じております。いつもこういったテーマをお選びになる理由はなにかありますか?

植民地戦争+αにとって樹ブロック以降の
代表作となったローマの力、
そこからブレない様に、サークルのブランドを
「歴史テイスト×中量級」に据えた為です。

歴史ファンから突っ込まれない様に、
毎回しっかり歴史を調べて作ることに拘っております。

勿論、歴史に興味が無い方でも楽しめる範囲で
ゲームに取り込むようにしています。
今回の「公国のペレストロイカ」では、
タタールの侵攻が発生する/しないで、
遊ばれた方々がかなり盛り上がるのを見ており
その点は上手くいったかなって思っています。

実は本作の最初のプレイでは「おもしろい」と感じたものの、何か物足りなさを感じました。

しかし、シナリオ集をプレイしてみることでその評価はガラッと変わり、まさにスルメイカのうまい棒状態・・・色々な味があり、噛みごたえがある素晴らしさに驚きと、なんと言えばいいのでしょうか、まるで期待に胸踊らせる少年のような気持ちで遊べました。

まさに狙った通りの反応に製作者として嬉しく思います。
「公国のペレストロイカ」は、シナリオを使わなければ、
初級者(初心者じゃない)から遊べるシンプルなルールにしています。
純粋に自分のところだけを見て、
タタールの発生を気にしながら、
楽しく建物を建築していく。そんなゲームです。

しかし、それだけではゲーマーの方には物足りないです。
そこで付属させたのが、シナリオになります。
シナリオ「ルーシの継承権」は、得点にゲーム用語で言う
マジョリティ(エリア毎に最大の人が得点を得られる)を
入れることで、他のプレイヤーの状態を見たり、
駆け引きが発生したりと、息抜けない緊迫さが出ます。
(プレイヤー間の相互関係が強くなります。)

一方、シナリオ「都市計画」では、プレイヤー間の相互関係は
強くはならない代わりに、先々を見通して建物を建てて
いかないと得点が伸びない様に、難しくしてあります。

プレイヤーの好みやゲームへの慣れに合わせて、
シナリオを選んで頂ければと思っています。

本作「公国のペレストロイカ」について、これまでの作品の経緯も含めて制作に至る
お話をお聞かせ下さい。公国のペレストロイカの特色はシナリオ、「組み立て」にあたる部分かと思います。この「組み立て」の「一興」は初めから取り入れる予定だったのでしょうか。

公国のペレストロイカの製作の経緯や、
「組み立て」にあたる部分は、こちらで書いております。
長くなりますので、ご興味がございましたらご覧いただければ幸いです。
https://blog.goo.ne.jp/chiyakazuha/e/1266c64e9183092b13681d5e3e72e128

ゲーム内容について
「ルーシの継承権」が一番賑やかに遊べて好きです笑
未だWEB版までは手を出せずに居るのですが、
一番気に入っているシナリオを教えて下|さい。

そうですね。私もそれなりのゲーマーですので
「ルーシの継承権」が一番好きです。

正教会と木こり
正教会と木こりについて比較した時、
実は修道院の方が作りやすいのではと考えました。
これは毛皮より木材の方が高得点建築物を制作するための
汎用性が高いのではという思いからでした。

正教会・修道院で建築できる「正教会」と、
木こりで建築できる「都市」とでは、
正教会が資源1つ分少ない為、効率が良いです。
一方、都市は資源さえあれば、【1度に複数建てることが出来る】ので、
正教会に劣らない効果だと思っています。
都市を最終的に5つ建築して勝利を収めた方も居られました。

修道院カード
純粋なアクションカードが増えるというのは、
ランダムだとしても非常に強力だと感じました。
修道院を作るという目的がなければ、アクションを
消費するため2枚引きのためにわざわざ騎士で
奪うことはあまり行いたくはありません。
このため、純粋の「引き」で修道院カードを手に入れた
プレイヤーの強さはなかなか顕著なものでした。
それで勝ちが決定するとまではいかないものの、
序盤で手に入れた場合の一強感は拭えません。
全プレイヤーが特定のプレイヤーを邪魔する
機会があるというシステム上、
製作者様の「意図的に強いプレイヤーを発生させる」という
考えが見え隠れするようで面白かったです笑
やはり「これは強い」というカードはあるのでしょうか。
私は前述の通り、ほとんどの状況で修道院カードが強いという認識です。

修道院カードの上の効果、カード2枚引きは確かに強いです。
しかし、既にアクションチップを持っている状態で、
かつ手札が多い状態では、2枚引いても捨てることになるので、
その様なタイミングでは意味をなさないカードです。
ゲームに慣れてきますと、ワザとカードを捨ててアクションチップを
予め得たり、カードも無理に使わず持ち越すことで、
次の手番に有効活用するテクニックもありますので、
いづれのカードもどのタイミングで得るかが重要だと思っています。

最後に一言お願い致します!

植民地戦争+αは、歴史に興味が無い人でも、歴史のロマンを
味わいながら楽しめる中量級ゲームを今後も作って行こうと思っております。
よろしくお願いいたします。

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