2019秋ゲームマーケット新作「みもじ」の感想、レビューです。
普段のワードゲームとは一線を画する繊細なファインドワードゲームです。
はじめに
子供のころ、とある友人の家族は各社の新聞を全て契約しており、テレビは一切なかったという。家族は皆、思い思いの新聞を眺めては社説にボソボソと感想を言い放ち、その間に友人は各社が提供しているクロスワードに熱中する朝だったようだ。
ゆっくりと思考してコトバをはめ込んでいくという動作は、誰に急かされる訳でもなく、朝に茶を啜りながらやるにはもってこいだと友人は語っていた。
ほとんどのワードゲームはパーティーよりの要素がある。
反射神経が問われたり、お下劣なワードを言い合ったり、ライアーゲームだったりと、どれも「お酒に合う」ゲームが多い。
特に昨今のゲームマーケットの市場はワードゲームばかりだ。
ワードゲームの祭典と揶揄されても文句は言えないだろう。
理由は単純で、作りやすく、安く提供でき、盛り上がるからだ。
さて、今回のワードゲームはどうだろうか。
これらパーティー寄りのワードゲームとは一線を画するものであると言えよう。
職人技とも思えるほど、このゲームの緻密さたるやいなや、
製作者の拘りが散りばめられており、一口にワードゲームと言えない潤しさがある。
さて、順を追って説明していこう。
箱
先ず箱である。
後述するインタビューでの質問の通り、手触り良く千代紙の小箱を連想させる。
皆さんはボードゲームをどのような基準で購入するだろうか。
内容ももちろんだが、私はパッケージ買い、いわゆるジャケ買いをすることが多い。
ゲームマーケットなんかは説明を聞いている暇など無く、自分の感性を信じて即買い即去りすることが多い。
この箱はどうだろうか。
まさに和菓子箱を連想させる艶、見た目である。
しかしこちらは一口食べて終わるわけではないので、「お得」である。
ゲームシステム
内容はシンプルだが、こちらの紹介動画が優美で分かりやすいのでご覧頂きたい。
タイルには{あ-ん}まで記載されており、さらにそれぞれの文字に追加の得点が付いている。まずはこのタイルで3*3のマスを作る。
この時点でいくつか「コトバ」が出来ているが、手番プレイヤーはさらに1枚タイルをめくってこれをこの3*3のタイルへ押し出すように差し込む。
差し込んで出来た新たな3*3で縦横斜めの最端が最初のコトバになるよう、コトバを探してこれを得点化する。
先述の通り、文字によっては追加点が得られる。
これは作りにくい文字、というのを予め確認してのことだろう。
良い。
そして手番プレイヤーが文字を見つけ終えたら、次に他のプレイヤーが探し出していないコトバを見つけこれも得点となる。
非常に妙妙たるシステムで、おかげで手番プレイヤーのダウンタイムが気にならない。
しかも、通常であれば手番プレイヤーVS他プレイヤーという構図が成り立つのだが、「これもあるのか!」と自分で思いつかないコトバを見つけたプレイヤーに拍手を贈りたい気持ちになる。
一種のひらめき体験に近い。
以上を繰り返して得点が高いプレイヤーの勝利である。
渋い茶を啜りながらゆっくりと熟考するのもまた良し。
まさに「お茶に合う」ゲーム、お茶請けゲーだ。
そういえば久しくあの友人に会っていない。
会う口実に、持って行こうか。
インタビュー
とにかくこの可愛らしい箱。そして和菓子によくある優しい雰囲気。 この「箱」について色々聞かせて下さい!
ご質問ありがとうございます!
まさに和菓子に使われているかのような箱を目指しました。
「みもじ」の特徴は、大きく2つあります。1つ目は日本語だからこそ成り立つゲームであること。2つ目は「じっくり頭の中の言葉に思いを馳せる」という体験ができること。
早いもの勝ちで言葉を見つけたり、変な言葉ができあがって爆笑したりするようなワードゲームとは一味違う体験をして頂きたいと思っています。
このような「みもじ」の特徴を考えると、日本茶と和菓子を嗜みながらゆったり遊ぶイメージがぴたりと合いました。
この箱は、そんな和の雅なイメージが遊ぶ人にも伝わるようにデザインしています。肌触りがよく落ち着いた色の紙を使用したのも、「みもじ」のロゴを銅の箔押しにしたのも、じっくり落ち着いて遊んでもらいたいという想いをこめたデザインです。
誰かの揚げ足を取るとか、そういう嫌な感じがなく「手助け」といった ところが本作の良さかと思われます。 初めからこういった狙いがあったのでしょうか 。
3x3に一文字押し込んで言葉を探すのは面白い」というのが最初の着想で、この体験の面白さを最大限活かすために「じっくり探して、見つける」を軸に作りこんだ結果がこのルールです。 手助けのような意図はありませんでしたが、手番の人がなるべくじっくり探せる雰囲気作りを模索したことが、結果として嫌な感じもなくしたのかもしれません。
単にある文字から読み取るのではなく、「差し込む」ことで他のプレイヤーが思考する時間を改めるといった、何とも秀麗なシステムでした。
かなり試行錯誤されたかと思われますが、どのあたりが一番苦労されましたか。
2でも触れましたが、文字を差し込んでから言葉を探すというのは一番最初の着想からあり、ゲームの軸でした。試行錯誤したのは、それを活かしたままゲームの形に整えるところです。
特に苦労したのは、手番の人がじっくり探すのを周りの人が待てる仕組みです。
一番大事にしたかった「じっくり探した末に、言葉を見つけた瞬間の喜び」を無くさないまま、待ち時間ができるだけ苦にならないようにと考え、手札は手番の人だけが引いて公開、取り残しは他の人が取れる、などの形になりました。
待ち時間を減らす為の時間制限、という安易な解決策への誘惑とは何度も戦いました。
お読みになられている方へ、お伝えしたいことがあればどうぞ!
「みもじ」は素早く頭を回転させたり面白いことを思いついたりするのとは全く違う方向から「言葉を楽しむ」ためのワードゲームです。
何度も見たのに次の瞬間いきなり言葉が見つかる、「そこにもあったか」の瞬間を。
人生で1度見かけただけの言葉が、頭の中で光り輝くような感覚を。
隣の人が隠し持った、自分の生活だけでは決して出会わない言葉との出会いを。
お茶でも飲みながら、じっくり言葉と向き合う時間を楽しんでいただければ嬉しいです。
ゲームマーケット情報
デザイン | NANAWARI(大山徹・大山藍子) |
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イラスト | NANAWARI(大山徹・大山藍子) |
人数 | 1~4人 |
時間 | 30~分 |
年齢 | 10歳~ |
価格 | 2500円 |
発売 | 2019秋 ブース番号土-U22 体験卓あり |
予約 | https://nanawari.myportfolio.com/reserve |
3行で説明1 | 3×3に並んだ九文字に、新しい文字を押し込んで |
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3行で説明2 | 三文字言葉をたくさん作れば高得点。 |
3行で説明3 | パズルゲームのようなじっくり系ワードゲームです。 |
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