苦しいゲームに美味いビール。横を見れば弾けるオッサン「ヘヴン&エール/Heaven&Ale」

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ここがおもしろい!
・デザインが美しい
・箱庭的に制作していく個人ボードの豊かさ
・近年のボードゲームには少ない序盤にゲームオーバーのあるスリル
・全ての資源をバランス良く伸ばさなければならない得点方式
・素材の早い者勝ちによる強烈なインタラクション
・一手が重く渋い、重厚感のあるプレイ

インスト時に気をつけること
・ゲームオーバーがあり得る
・ボーナスカードは1枚破棄で3金
・修道士は発動と起動があるので注意
・ボーナスタイルは条件が揃っていれば一度に全て獲得出来る
・決算は各種一度きり

はじめに

普通の生ビールだけなら最近はホッピーを頼むことが多い酒すごろくです。
クラフトビールがあれば、もちろんそちらを先に頼みます!笑

さて、実はクラフトビールの定義というものは正確には決められておりません。
ロコの水だけを原料とした地ビールであったり、小規模で伝統的な醸造所が作ったものやトラピストビール(修道院ビール)を指したりと様々です。

今回のヘヴンアンドエールをプレイしているときに「修道院がビールを飲んだらダメでしょ笑」や「全くビールを作っている感じはしないけれどオモシロイw」などの話がプレイ中に聞こえてきました。
それなら先ずエールビールをネタに書こうかなと思い、先にそちらをお話することにしましょう。

私の知識内の乏しい説明となりますが、少しでも修道院とエールビールの関係性について知っていれば、このゲームをさらに楽しめるかもしれません。

修道院ビール

RitaE / Pixabay

今回のヘヴンアンドエールは修道院ビールが舞台(テーマ)と言って間違いないでしょう。

ビールという物自体はゲルマン民族の時代から存在していたのですが、修道院ビールとして誕生した理由は飲水の確保のためでした。

紀元8世紀か9世紀のドイツは技術的に衛生的な水の確保が困難です。
そこで長期保存可能であり、栄養がたっぷりのビールは安全な飲み物として修道院の中で作られることになりました。

当時のビールは”飲むパン”と例えられていたそうです。
このあたりの話は、ビール好きには釈迦に説法ですが、カール大帝の話へと繋がります。

エールビール

dghchocolatier / Pixabay

当時の修道院は、最先端の情報や科学力、そして技術力が集まりやすい環境でした。
そういった叡智が集まり、エールビールの製作が始まります。
日本のビールはラガー(下面発酵)がほとんどですが、こういったクラフトビールはエール(上面発酵)となります。
上面発酵酵母は常温でも発酵させることの出来るビールです。
コストは掛かりますが長期保存が可能であり、小規模生産が可能なために修道院ビールの主役となりました。
また、修道院への情報の集約、醸造の科学的な分析を修道士たちが直接身につけたこともエールビールの大きな飛躍と言えるでしょう。
そして貧しいものに施すビールや収益として販売するビールを展開していき、次第に修道院ビールは広がっていきます。

トラピストビール

Pexels / Pixabay

近年では修道院ビールは「トラピストビール」としてきちんと定義されるようになりました。
1.修道院内で造られているビール
2.醸造に関する権限を修道士が行う
3.ビール販売で得た収入は慈善事業に使うこと

以上のことが守られて初めてトラピストビールと呼ばれます。
皆さんが飲まれている「シメイ」ビールはトラピストビールの一つです。
(これらに該当しないアビィビールと呼ばれるものもあります)

ヘヴンアンドエールに醸造監督コマがあるのにはこのトラピストビールを意識しているからかもしれません。

今でこそ個性豊かなエールビールですが、貴重な収入源であったために平均した美味しさを保つことが当時のビールには求められました。

基本的にフルーティーで香り豊か、コクの強いビールのために、麦芽、ホップ、水の量のバランスが非常に重要であり、数滴の分量でさえミスが許されないほど厳格なものでした。
特徴の一つとして、発酵途中にハーブなどをよく添加して調整するところからも、その味わいのバランスや保存を高めつつ美味さを求める姿勢が伺えます。

ビール製作と得点方法の関連性

Maklay62 / Pixabay

ヘヴンアンドエールの重要なシステムの一つとして、スコアが1番低い材料(麦、ホップ等)があれば一番高い材料の得点を記載された比率で下げて1番低い材料のスコアを上げる、というシステムがあります。チグリスユーフラテスと同じシステムですね。

これは、どの素材の分量もまばらでは美味しいビールが作れない、先述の通り、美味しいビールというものは素材とのバランスが最重要だと示しているのでしょう。

面白いのはその比率が醸造監督コマで変わるところですね。

醸造監督コマはつまり、そのビール製作の技術力を表しているのだと考えられます。
その修道院の技術力が高ければ2:1の調整(高いスコアの材料を2つ下げて、最下位のスコアの材料を1つあげる)で、技術力が低ければ3:1の調整(高いスコアの材料を3つ下げて、最下位のスコアの材料を1つあげる)になってしまうということです。

醸造監督コマは、直接その修道院の技術力の高さを表しているのですね。

ちょっと無理矢理なところはあるかもしれませんが、きちんとテーマに沿って作られたゲームと言えるでしょう。

ゲームシステム

P1113929.JPG  早い者勝ちによる資源を獲得して得点を平均的に上げ、箱庭的に個人ボードを作り上げていくゲームです。
人数によって規定されたラウンドが終わればゲーム終了となり、得点計算を行います。

ゲーム終了時の得点計算

P1113907.JPG  得点計算の方法は少々特殊です。
チグリスユーフラテスと同様に、個人ボードの1番点数が低い資源が自分の得点となります。
ゲーム終了時に1番高い点数の資源を1番点数の低い資源と調整しなければなりません。
この調整はゲーム終了時に個人ボードにある醸造監督コマの進んだ数によって決まります。
3:1のエリアに酒造監督コマが進んでいた場合は1番高い資源を3マス下げて1番低い資源を1マス上げます。
2:1なら1番高い資源は2マス下げれば良く、それで1番低い資源は1マス上がります。

この酒造監督駒の位置で勝敗が分かれると言っても過言ではありません。

アクション

P1113904.JPG  手番ではメインボードにぐるりと一周したトラックから自分の駒を好きな場所まで移動して、置いたところのアクションを行います。
逆走は出来ませんが、一気に最後まで進めることも可能です。
しかし、それまでの間に行いたいアクションが多いので、いかに相手より早くお得なアクションを先取し、そして満遍なく色々なアクションを行うかがのジレンマに悩まされます。

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先にゴールしたプレイヤーは、ゴール時のボーナスを選び、他のプレイヤーが終わるまで待っていなければなりません。全プレイヤーが一周したら次のラウンドとなります。

各ラウンドによってそれぞれ置かれるアクションや獲得できる資源の数値が異なり、盤面によって自分がどのように動くかが変わってきます。

トラック上で行うことの出来るアクションは次の4種類。

個人ボードへの資源の配置

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メインボードトラックに置いてある資源を獲得して個人ボードへ配置します。
日なたと日陰で置くときに発生する費用が異なり、例えば3金の資源を置く場合は日なただと2倍の6金、日陰だと3金で置けます。
つまり、日なたに置く場合は記載された資源の2倍を支払う必要があります。

なんで費用に差があるかと言えば、それは勿論効果が異なるためです。
日なたは置いた資源の得点が増えて、日陰は置いた資源に書かれた数自分のお金を得られます。

日陰の配置に力を入れすぎるとタイル購入時のお金には困りませんが、結果得点は伸びませんし、日なたばかりですと資金はカツカツになりタイルが購入できなくなってしまいます。

「1金で配置して1金手に入れたらダメじゃないかー」と思われるのですが、これらのタイルの効果は重複して発生する場合があります。

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効果の発生は村の周りの6箇所に全てタイルを置ききったときと決算時(後述)の時に発生します。
そのため他の村に隣接しているタイルがあれば重複して効果が発生出来る場合があります。

村の周りの全てのタイルが効果発動出来るわけではなく、その周りの数字の和でどのタイルがいくつ発動出来るかが決まります。

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最小0-7の場合は酒造監督駒が6進みタイルの効果は発生せず、最大24の場合は4箇所の隣接したタイルの効果が得られます。

先述の通り日陰にある場合はその数値のお金を獲得し、日なたは個人ボードの資源の得点を上げられます。

ボーナスの達成

P1113912.JPG メインボード中央に目的達成のボーナスタイル(樽)があります。
それぞれ達成条件が異なり早いもの勝ちとなります。

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条件が達成していれば全て一度に獲得できることから、ゲーム後半になりますと、このマスに誰が一番早くこのマスにとまるか熾烈な争いが繰り広げられます笑

修道士の獲得

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皆んな働き者です。
修道士の価格はタイルではなくボードに記載されておりますので、絵柄が異なる場合がありますが金額は固定となります
効果の発生は条件によって異なりますが、決算時(起動)は隣接したタイルを発動して資源の得点を上げたり、隣接した修道士タイルを発動させ酒造監督コマを上げたりします。

決算

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個人ボードの右端に記載されている10種類の決算が行えます。
決算の種類は止まったそのマスによって決まります。

修道士を選んだ場合は修道士に隣接した資源タイルの効果を得ます。

作物であればその作物に記載されている数字による収益か、どの資源の種類なのかの2択が選べます。
「4」を選べば日なたと日陰にある全ての「4」がついている資源が利用でき、4と書かれた麦やホップの得点が上がったり、日陰にある合計金額が貰えます。
資源の種類を選べば、日なたと日陰にある全ての麦に書かれた数字分のの効果が得られます。

そして隣接した2箇所の決算が行われた場合は初めに全員に配られるボーナスカードが即時使えます。
最初は12金ですかね。

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このようにメインボードのトラックの中にあるワーカーを時計回りに動かして、全員スタート位置に戻れば1ラウンド終了。

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プレイ人数で規定されたラウンドが終わればゲームが終了。

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先述の得点の調整を行い、得点が一番高いプレイヤーの勝利です。

エラッタ

重要な手番開始についてエラッタがあるので注意です。

感想

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最初はアズールのミハエル・キースリングよりもポルターファスの作者であるアンドレ・シュミットの作品という印象が強く、正直誰も注目しないだろうと思っていたのですが評判が良く(?)驚きです。悔しい笑
ただ実際のところ、そこまではしゃげるほどオモシロイゲームとは思えませんが、私好みのゲームでした。
エッセン新作の中では自分の中で二番目に面白いゲームなのかな。今のところ。

効率さが求められ、相手の行動がある程度明白になるゲームのためにカットが入りやすく、インタラクションは高めです。
そのため苦手な方も多いかと思いますし、賛否両論なのは確かです。

このゲームはラウンド始めのメインボードの状況により、個人ボードをどのように発展させていくかが肝となります。
(日向を左、日陰を右とした時)
ラウンド毎の盤面にもよりますが、左右それぞれぞれバランス良く配置すると全面が埋まりやすく、下段中央から上にかけての配置の得点はそこまで伸びませんが臨機応変に対応できました。
左下から右下からじりじりと上に伸ばす(つまり無理でも左から上と右へと伸ばす)方式はリスキーな分、得点が上げやすい(オッサンを自由に日向に配置できる余裕があるから)傾向にあるように感じます。

最終的には修道院を伸ばさなければなりませんので、それまでの過程でどのように個人ボードを整えていくかも重要であり、このように一本調子にならず面白い。
オッサンに関しては自分の最初に選んだオッサンによって運が強いられますが笑

最近のボードゲームには珍しく、金0のゲームオーバーもあり得るという渋みや、得点も100点や200点などがドカッと入るわけではなくジリジリと伸びる1点が重要なところは逆に好印象。

正直なところ世間一般でそこまで言われるほどの初見殺しなボードゲームではないと思います。

他のボードゲームでも、インスト時にどうなるかを予測しないと痛い目に合うゲームは多くあり、それはあくまでボードゲームの習熟度や個人の能力の問題で、どのボードゲームにも言えることです。
あまり悪い印象が残らないよう得点が大味であったり、「まだまだいけるかも」と思わせるようなアクションが多いゲームが増えてきたからこそ、余計にそう感じるのかもしれませんね。

むしろ初見殺しされたいくらいのリプレイ性はあるのではと思います笑
ちなみに私も他2人のプレイヤーからカットを重ねられて得点が得られなかったこともあります笑

良くも悪くも負けるのは自分の実力だと清々しく開き直れる作品。
おすすめ。


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