むかしのはなし。
給食がない日はお弁当だったような覚えがあります。
好きな人同士でくっついてお弁当を食べるのです。
お弁当の蓋を開けた瞬間、疾風の矢のごとく他の子のお弁当の内容を見る子がいます。
「・・・エビフライ美味しそうだね!」
なんて言われれば、ありがとう!って返せば良いのですが
言われたら最後、もう交換したいって相手が望んでるときあるじゃないですか。
綺麗でまんまるな目をしながら、私のエビフライをずっと無言で、満遍なく見てくるのです。
「・・・じゃあこうかんっこする?」
と言わざる得ない。
そこでその子が
「じゃあ私のミートボールあげるよ!」
と言ってエビフライを要求してくるわけです。
明らかにその子のミートボールと私の弁当の半分以上の比率を占めるエビフライの割合が合わない。
かといって、断るとどうでしょうか。
幼少期はどんな理不尽でも押し通されます。断った結果、コミニティ上の死を招く危険性すらあるのです。
小さい頃でもそれくらいの動物的本能はあるわけで、瞬時に、その子が泣くところまでイメージした結果「うん!いいよ!」となるわけです。
しかし、それを見た同じグループの子から無慈悲な一言。
「え!良いな~」
私はココロの中でつぶやきます。
・・・ばいばい、エビフライ・・・。
そしてそっと笑顔でこう言うのです。
「じゃあ、こうかんっこしようか!」
本ゲームはそんな(ちがう)理不尽な配分を要求、というか押し付けられた時、突っぱねるか受け入れるかの選択を迫られるゲームです。
ゲームマーケット販売情報
デザイン | ゲーム:外鴨なきく, アート:少年(葵屋) |
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イラスト | わたなべちえこ |
人数 | 3~4人 |
時間 | 10~20分 |
年齢 | 3歳~ |
価格 | 2000円 |
発売 | 2017秋 |
両日の土日開催
ブース番号2017秋 【E022】 体験卓あり
システム
親と子を決め理不尽な要求を受け入れるかどうかで展開していきます。
獲得したおもちゃの得点が1番多いプレイヤーの勝利です。
1-6の数字が記載された6色+特殊2枚の計38枚のカードでゲームを遊びます。
4人プレイの場合、各プレイヤーに手札として9枚配り2枚は使用しないでゲームから除外します。
2フェイズ2-3ステップで構成されています。
1.ラウンド開始フェイズ
2.友情フェイズ
a.自慢ステップ
b.配分ステップ
ラウンド開始フェイズで親を決めます。
次に友情フェイズの自慢ステップで親は場に手札のカードを1枚出します。
他プレイヤーはそのカードを見て手札から場にカードを出します。
そのため子になる確率が高い手札のカードを場に出すことが基本プレイとなります。
但し獲得したカードはセットコレクション(決められた組合せが揃えばボーナス得点を得られる)としてボーナスが得られるため、セットコレクションになり、かつ、子になるようなカードを場に出すようにします。
また、親もセットコレクションが欲しいものですから、親が得ているカードを見ることで、出すカードをだいたい予想することが出来ます。
このあたりの暗黙の了解での親と子の綱引き加減が非常におもしろくそそられるプレイ感を生み出します。
親以外のプレイヤーが出したカードの種類で子(心の友)が決まります。
子になるためには以下の優先順位です。
1.数字が同じ
2.ペアレントカード(後述;得点0同色扱い)
3.色が同じで、かつ親より小さい中で数字が1番高いカード
数字が同じプレイヤーが複数名居る場合は親が選びます。
ここで「あべこべ」と「生意気だぞ!」の追加可能な特別ルールが選べますが後述します。
親と子が決まったら配分ステップを開始します。
親と子、そして他プレイヤーが手札から出したカード、4人プレイであれば4枚を二人で配分します。
親が配分を子が決めるか自分が決めるかを選びます。
親が配分する場合は子が1.配分の拒否 2.配分の承諾を選べます。
配分の拒否があった場合は、そのカードは親と子のものにならず、次回に持ち越されます。
配分が承諾された場合は親が選択したその配分でどちらも受け取ります。
不平等だと感じて拒否することもそうなのですが、実はセットコレクションに影響していきます。自分が受け取ることによりセットコレクションの効果で得点が下がる場合があるのです。
終盤になると親と子がどのような配分をしても親と子の両者は受け取るとデメリットしか起きないという場合があります。
このときに暗黙の了解で「拒否」させること、つまり「どちらも受け取ってもデメリットしかないよ」と気付かせるような配分を行うのも一つの手かもしれません。
子が決めることを選んだ場合は親に配分の拒否権はなく、そのまま子が決めた配分で受け取ります。
セットコレクションが絡んでくる関係上、ゲーマーであれば相手の得点になっているカードを見つつWin-Winの関係で配分を行うでしょう。
しかしながらどうしてもそこがオープンになっているものですから「こうした方が良い」という「奉行」プレイヤーがいるとちょっと楽しめないかもしれません。
手札は相手に知られていないので、序盤はそんなことはありませんが、終盤になると情報として公開されていないのは伏せられた2枚と各プレイヤーが保持している手札2枚になるので、理詰めは可能です。
配分が終えたらラウンド開始フェイズに戻ります。
次回の親は前のフェイズの親と子以外から親が選びます。
得点方法とセットコレクション
得られたカードを色別に配置して数が1番多いカードが得点となります。
そしてセットコレクションとして、同色のカードを獲得している数ごとの条件で追加のボーナス得点があります。
同色3枚:+3点
同色4枚:+7点
同色5枚:+12点
同色6枚:+18点
同色7枚:+25点
同色8枚:+33点
全色揃えた最高得点(先ず無理)でも36点のため、こちらのセットコレクションがかなり重要ということはお分かりいただけるかと思われます。
そのため親と子の駆け引きは「色」に焦点が合うために非常に分かりやすい交渉が楽しめる工夫があるわけです。
前述のペアレントカードは獲得した時0点扱いになりますが、獲得しているカードに重ねることでそのカードと同じ色の扱いとなります。
つまり、セットコレクションを揃えやすくするためのカードとなるわけです。
さて、ここで追加の特殊ルール2つをご紹介しましょう。
「あべこべ」と「生意気だぞ!」
もう気付かれている方もいらっしゃるかもしれません。
1.数字が同じ
2.ペアレントカード(後述;得点0同色扱い)
3.色が同じで、かつ親より小さい中で数字が1番高いカード
上記条件でカードを出した時に親と子が決まりますが、全員が同数字もしくは全員が上記条件を満たしていない状態はどのようになるのかが追加のルールとなります。
全員が同数字になった場合は「あべこべ」が発生します。
「あべこべ」は今まで獲得している数字の得点方法が逆になります。
例えば赤の3.4.6を獲得している場合、通常は6点のカウントですがこれを3点としてカウントします。
親と子のやり取りで得点がどちらも下がる可能性はこちらのあべこべが発生している状況で有り得ます。
再度「あべこべ」が発生すればもとに戻ります。
そのため「あべこべ」状態が終盤まで続けばひっくり返って元に戻ることもないと判断しますから、減点にならないような受け渡しを慎重に行う必要が出てくるでしょう。
さらにこの「あべこべ」ルールがあるために、さらにセットコレクションによるボーナスがより重要となります。
「あべこべ」状態は実質的な得点の縮小ですから、影響を受けないセットコレクションボーナスを揃えている者の優位性をさらに高めるものです。
全ての条件が満たされていない場合は「生意気だぞ!」が起こります。
親以外の全てのプレイヤーは現時点で得点が一番高い数字のカードを場に出したカードを必ず入替えなければなりません。
そして親は任意のプレイヤー1人を指名して子をすることが出来ます。
1番の効果としては獲得しているカードを入れ替える、つまり相手のセットコレクションを崩しつつ、親優位に展開させることが目的になるかと思われます。
ゲーム終了
以上のフェイズを繰り返して、最後に手札が1枚になればゲーム終了です。
最後の1枚は自分の場へ獲得することが出来ます。
セットコレクションによるボーナスを追加した最終得点計算が終わり、最も得点の高いプレイヤーがガキ大将になります。
インタビュー
こんにちは!『最強ガキ大将No.1』とても楽しめました。
ガチガチでも、ゆるくも遊べるもので良かったです。
しかし裏を返せば実力の差が顕著に現れるゲームなのかもしれないなあとも思いました。。特にゲーマーズの中で遊ぶ場合、身内で行わないと少しギズギズしてしまうような気がしましたがどうでしょうか。
オープン会だと「あれが得なのに!」という発言をする方が現れかねないとは感じました(手札で言い訳が出来るのですが終盤だと言い訳のしようがなくなるためです)。
製作作者様としてどのような方にプレイして頂きたいですか?
また、この作品を制作する至った経緯を教えてください。
絵柄も素敵ですが、どちらかと言えばこのシステムに心惹かれ、3人でも2-3回と続けて遊べる楽しさでした。
負けてもポジティブな悔しさで、何度か遊びたくなります。
あまりにもおもしろいシステムでしたので、もしかしたらこういったトランプの遊びがあってそれを基にしたのか?などとも思ったのですがいかがでしょうか。
こんにちは、外鴨なきくです。
『最強ガキ大将No.1』を遊んでいただきありがとうございます。
たしかにガチで遊ぶ場合、最終ラウンドは出せるカードの選択の余地が少ないないのでそこまで大事にはなりませんが、最終ラウンド一つ手前のラウンドだと、『出すカード』や『流す』行為が大分危険な選択になったりしますね。
中盤から終盤に、いつの間にかピーキーな選択ポイントにいることが多いゲームだと思います。
基本、親と『心の友』との交渉が配分ステップで自然発生するので、大局と自分の利益との綱引きで険悪になるかもしれませんね・・・。
私としては、一試合10分程度なので、気にせず複数回遊んでみて欲しいという感じです。
ただ、複数回プレイ(例えば参加人数分試合して合計点で競う等)をルールにすると30~60分くらいになるので止めました。
でもそのルールにした方が一試合へのイガイガが減ってよかったかもしれません。
後悔先に立たずですね。対象(大将)プレイヤーは、アラフォーでボードゲームゲームにハマって数年、軽いゲームから重いゲームまでまんべんなく楽しくタイプ・・・ってそれは私自身ですねw
対象年齢を数字が足し算できれば遊べるだろうと6歳以上にしていますが、きちんと勝つ思考ができるのは小学生高学年以上になるかと思います。
手札というランダムリソースと、『人間の心』という不確定なものと、かっちり論理で決まる数字と色の三つを高度にバランスすることに喜びを覚える人が対象ですかね。
心の中に『ガキ大将』がいる人に楽しんでほしいです。基にしたトランプゲームはありません。
元ネタというか、『これを遊びたい!』と思ってゲームを作るきっかけになったのは、「最後通牒」という心理テストです。
「最後通牒」とは、AとBがいる状態で、Aが5000円を持っていて二つのグループに分けます。
A:3000円、B:2000円
という具合です。
そのとき、Bが受け入れれば、両者そのままお金を配分されます。
断ったら両者とも1円も受け取れません。
この心理テスト実験を、様々な分け方で試し、Bについて調べたとき、テストステロンが高い人ほど不公平を許さない傾向にあるという事がわかりました。
テストステロンとは男性ホルモンです。つまり、男らしいほど、不公平な提案をされた時に断る率が高かったのです。
この記事を読んだとき、このゲームをやってみたいなと思いました。
でもその時ボドゲにハマって1年くらいでしたが、知る限りでこの配分方法を採用しているゲームがなかったので、ないなら自分で作ろう、テーマは男らしさにしよう、と思ったのがゲーム制作の始まりです。
最初のゲーム制作なので、最後通牒システム以外は、既存のルールを組み合わせて作るようにしました。
一番最初はお金チップを大量に用意して文字通り山分けにする方式を考えましたがコンポーネント代が高くなるのでやめ、紙に数字を書いて価値を表すというアイデアを思いつき、プレイングカードの再発明を行いました。やはり先人の肩に乗った方が遠くまで見渡せますね!
点数関係のルールは1人でのテストプレイ時に、四人分のカード全ての足し算をするのが面倒くさかったので足す数を減らすために考案しました。
あとは、『男らしさが大事で、かつ既存の有名テーマと被らないテーマ』という事で『ガキ大将』をテーマに設定して今に至ります。ちなみに、「最後通牒」では、朝食で炭水化物を食べた人も、不公平な提案をされた時に断る率が高かったそうです。
午前中の大事な会議に臨む際には朝食に炭水化物を食べることをお勧めしますw
ご丁寧にありがとうございます。
ギスギスは前述の通りなのですが、これがわりとポジティブなギスギスで、「もう一回やりたい」「悔しい」といったものでした。
これはきっと15分という絶妙な終了時間のおかげかと思われます。
そのためラウンド制にしてしまうと「それまでこのゲームをやらなければならない」というある種の縛りが出来てしまいます。
確かに一試合でのギスギスは減りそうですが、もっとネガティブなギスギスにもなりかねないので現状の方が好きです。
人間の不確定な要素をルールにバランサーとして組み込むのはボードゲームシステムの重要な基板ですよね。
これは常々思っておりました。
今回のゲームではそれが「最後通牒」のシステム、そして「生意気だぞ!」「あべこべ」なのだと感じます。最後通牒はメインとして、あべこべは中盤までは発生しやすいのですが終盤になると起こらないので「あべこべ」状態がいつまで続くかが緊迫していて良いです。
そして生意気だぞ!終盤で発生しやすくなるので、逆転やどんでん返しが大いにあり得て考えるのが楽しかったです。
コンポーネントのカード化・縮小はボードゲーム製作において重要な課題の一つですよね。
ちなみにこのあたりの工夫が非常にうまいと思うのは@hypnoss このショーナンさんという方です。この方はいろいろとすごいです。
朝ではないのですが、仕事では交渉事はなるべくお昼後に行っております。
今思えば、炭水化物を摂取して「不平等を受け入れる」という状態を、もしかしたら逆手に取った方法なのかもしれませんね笑
いろいろとご丁寧にありがとうございました。
感想
おもしろいですよ、『最強ガキ大将No.1』
絵柄に反してなかなかゲーマーズゲームだと感じましたが、ボードゲームが初めてという方同士でも大変楽しめます。
どちらかと言えばそういった方同士の方が向いているかもしれません。
親と子の引き渡しはなかなか良いギスギスですね笑
親と子の引き継ぎを考えた場合、推奨プレイ人数は3人。
より格差がつきやすくガチガチでプレイするならば4人です。
プレイヤーによってはこのゲームはたくさんの表情を見せてくれるはずです。
いろいろなところで遊べば『最強ガキ大将No.1』をより面白く感じるでしょう。
さて、あなたの周りの「最強ガキ大将」は、一体誰になりそうですか?
参加か出来なかった、もしくは買い逃した方は同人ボードゲームのラインナップが豊富にある通販ショップの駿河屋もオススメです。
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