ゲームマーケット 2019 秋の新作です。悪魔✕バッティング✕競り✕デッキ構築、要素てんこもりなのにシステムがしっかりまとまっていて短時間で終わる。あれ?褒めるところしか無い??
はじめに
実は毎年恒例の本ゲムマの事前レビューは色々と隠れた設定があり、その中でも私が決めているのは「ダークホース」の位置づけだ。
もちろんインディーズボードゲームが多く出るゲムマでは、「無名」や「新人」は多く、それこそこの祭典で一躍有名になるゲームもある。
事前レビューを頂いた中で、好き嫌いに分かれれて、かつ無名、そして私が面白いと感じたものを今回のダークホース枠として紹介している。
実は今回そのダークホース枠が2作品あり、今回はそのうちの一つを紹介していきたい。
こちらがゲムマの解説ページなのだが,これだけだとどんなゲームなのか全くピンとこない。
残念ながら普段の私であればイラストが綺麗だな、と感じるくらいで見過ごすレベルだ。
しかし本作、実はイラストもさることながら、ゲームシステムが逸脱して面白い。
あーもったいない。面白いからみんな遊んでほしい。
お一人でこのシステムを考えられたということなので、ある種奇跡のような、本当になんでこれが出来たの?と思うくらいハマる。
そこで実際聞いてみたところ-私はシステム計算等が好きだからそういう返答を期待していたが、ある漫画から分析して得た結果をゲームに投影したらしい。
なんともこちらも面白い回答なので、インタビューもご覧頂きたい。
システム
バッティング、 デッキ構築、 オークション、 これらの要素を上手くまとめ上げたのが本作だ。最後に構築したデッキからカードを引いて、種類が多いプレイヤーの勝ちとなる。
プレイヤーには最初に6枚のカードが配られる。
これをデッキとして、よくシャッフルしてから2枚を手札に加える。
そしてランダムに3枚場に出たカードを、自分が持っている手札で落札するシステムだ。
場に出す時は手札から裏向きで出さなければならない。
他のプレイヤーと場に出た好きなカード1枚を 「いっせーのせ!」で指さし、かぶった場合は手札から場に出したカードを表にして数値が高いカードを出したプレイヤーが手にする事ができる。
最初に配られたカードは全員同じ数値同じ種類のカードだ。
そのため非常に読みやすいが、その反面面白さは特にない。
落札することによって、 落札したカードは捨て場に行き、デッキからカードが引くことができなくなった(最初のデッキは全部で6枚ということになる)ら捨場とリシャッフルをかけ落札したカードが新たに手札に来るようになる。
これらを繰り返して遊んでいくのだが 、色々と特殊な効果があって非常に面白い。
例えば親の定番だったら親は自分が出したカードの数値を+2して出すことができる。
例えばこのカードを手札から場に出し、他のプレイヤーとバッティングした場合、このカードは通常通りオープンし、右上のプラスの効果を受ける。
この効果はさらにデッキから1枚ドローすることができる。
カードの数値自体は2として非常に低い値であるが、 効果としては強力である。
しかし一番はじめに述べた通り、 実のところ勝敗は自分が持っているカードの種類が多いプレイヤーの勝ちということだ。
これが運も絡められた本当に良く出来ているシステムだと感じた。
ゲームの終了条件は場の山札がなくなり、最後の競りが行われた後である。
それぞれのプレイヤーは今持っている手札をそのまま残し自分の山札と捨て札は全て裏向きにして混ぜてシャッフルする。
そこから2枚を裏向きのまま選び残っていた手札に加える。
この2枚を加えた後の手札の中にある悪魔カードの種類が最も多いプレイヤーがゲームの勝利だ。
画像の場合は全部で6種類のカードが最終的に揃えられたということである。
私の右隣のプレイヤーは7種類のカードを揃えることができたので、 私の負けである。
いやはや本当によくできている。
つまり高い値がたくさん入っていれば落札することも容易だが、この最後のシャッフルによって、同じカード、 もしくは同じ高い数値のカードが、被る確率が高くなる。
そのためできる限り高い数値でも同じカードを手に入れないように、さらに言うのであれば、 効果がついてる中に自分のデッキから除外する事ができるカードもあり、これをゲームの終盤にうまく使って、 ダブっているカードをゲームから除外しデッキを圧縮し、 勝率を高めるということもできる。
いやはや本当に面白い。
感想
面白いを連呼してしまったが、 もちろんダークホースとして例えているのは理由がある。 まず説明書の読みづらい。ただこれは理解できる範疇なので特に問題ないと思う。
前述の通りゲムマのホームページの説明書もなんだかよくわからないというのも理由だ。
最大の理由とした値段である。
なんら事前情報がない状態で紙のカードゲームに3000円を払うというのは少々抵抗がある方も少なくないだろう。
あとはカード自体の問題で、2-3回遊んだ程度で、カードの四隅、もしくは辺の部分に剥げがすぐできてしまう。
これはこのカード自体がデザインを優先して作られた光沢紙のためだ。
裏向きでカードを出すという性質上、この剥げでわかることは無いと思うが、 疑心暗鬼になってしまうのはゲームの楽しさを損なう可能性がある。
これはカードスリーブで解決する問題なので、購入したら必ずカードスリーブを入れることを強くお勧めする。
さて、後はデザインが良いものだから、デザイン集として購入するのであれば安いものである。
しかし私はこのイラストレーターの方について何も知らず、そのためこのデザインに対しての費用というのが全くピンとこない。
もしこのレビューをご覧になっている読者が、デザインも最高に良いと感じたらこれはマストバイだ。
なぜならシステム面では私がお勧めできるほど、面白いものであるからだ。
このシステムであれば実際このデザインでなくとも、例えば有名なアイドルグループとコラボして、自分の推しをバッティングしないように選び、最後にアイドルグループ結成で勝つということも出来るだろう。
システムは本当に分かりやすくかつ面白いものなので是非お財布と相談してみてほしい。
デザイン集として、しかもゲームとしても面白いのであれば実質無料なのではないだろうか。
インタビュー
大変素敵で面白いゲームでした!
このルールはどちらの方が考えられたのでしょうか。
競りのようでデッキ構築に近い要素を持つというシステムが手に汗握り盛り上がりました。
ありがとうございます。
有り難いお言葉をいただき、大変嬉しく思います。
符亀は個人のサークルですので、私がルールの考案を行いました。
元々デッキ構築系のゲームを短時間で成立させるためにどうすればよいかを考えていたのですが、結果的になぜかバッティングゲームに収まったという次第でございます。
このシステムを個人で出された、考えられたというのが驚きです。他の仲間からの意見はdと0が見にくいだとか、はありましたが、システムの洗練さも美しく、かなり推したい作品です。
お褒めいただき光栄です。
0とDはたしかにその通りで、製作の際はまだマシなフォントだったのでそのままいったのですが、今思えばそれだけ自分で書くことも考えてよかったと思っております。
このシステムを作られた経緯を良ければ教えていただけますか?着想はデッキ構築ゲーを短時間で作る、というところだとおもいますが。
着想は実は全く別のところで、漫画の「かぐや様は告らせたい」が原点となっております。
私はこの漫画のファンなのですが、面白さを分析するにあたり、
瞬間的快楽(キャラがかわいい)
短期的快楽(各ギャグが面白い)
中期的快楽(伏線回収や天丼が上手い)
長期的快楽(キャラ達の成長やドラマ)
といった多層構造になっていると思いました。
その構造を再現するため、超短期的快楽はジゼロさんのイラスト、短期的快楽はバッティングゲーム、長期的快楽はデッキ構築というふうにまとまりました。
(ここがこうなったのは、以前に短時間のデッキ構築を思案していたからでもあります。)
そして、では中期的快楽として何を入れるか考えた結果、「被りたいと被りたくないが変わる」というアイデアが浮かび、ツミカブリの原案が生まれたという次第でございます。
大変興味深いご返答ありがとうござます。
少し重なるかもしれませんが今回のゲームを作られた経緯を教えて下さい。
上の経緯に加え、前作の「超超長城」に対するある種リベンジ的なところもございます。
前作では、全てのカードに「壁という勝利点にする」という役割を持たせることで圧縮や取捨選択の必要性を希薄化させ、初心者向けのデッキ構築を作ろうとしていました。
しかし、最終的には「壁を手札に戻してもいい」などのコンボ要素を入れたり、手札と壁の二つのリソースをやりくりするというジレンマを加えたりして、歯応えのある上級者向けのゲームに調整することとしました。
その際切り捨てた「初心者向けのデッキ構築」というコンセプトの実現のため、デッキ構築の構造は除いて考え方だけを残したもの。それと上記の分析を組み合わせたのが本作です。
色々とありがとうございます。
ぜひ今回のダークホース的なポジションとして紹介させてください。
それでは最後にお読みになられている方へメッセージがあればお願い致します。
24日(日)、青海じゃないほうのビッグサイトで開催されますコミティアに、イラストを担当してくださったジゼロ様が出展されます。
新刊には「ツミカブリ」の描き下ろしもありますので、日曜日は両方のビッグサイトへ行くことをお忘れなく!
注、符亀は土曜日のみの出展です。
ゲムマ情報
デザイン | 符亀 |
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イラスト | ジゼロ |
人数 | 3~4人 |
時間 | 15~25分 |
年齢 | 13歳~ |
価格 | 3000円 |
発売 | 2019秋 土-R14 体験卓あり |
予約 | https://forms.gle/XfBQrXQCD3W1328G8 |
3行で説明1 | 選んだカードが誰とも被らなければ必ずもらえる→カードを集めるには被らない方が有利 |
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3行で説明2 | 伏せたカードの効果は被らないと使えない→伏せたカードによっては被った方が有利 |
3行で説明3 | 「被りたい」「被りたくない」が交差する、プログレッシブなバッティングゲーム |
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