美しく潤しい、オナラ舞うヒューマンコメディ 映画「swiss armyman/スイスアーミーマン」

はじめに

半端なくお下品でお下劣な、ポップコーン片手にコーラが飲めるコメディ映画です。

何からお伝えしましょう。
一先ず私が言えるのはこの映画を観て大変満足して帰宅したということでしょうか。
帰宅後にサントラ購入を考えるほど、私の中では「おもしろい」と言い切れるものでした。

この映画を一言「おもしろくない」と評価するのは些か暴論であり、ただ残念ながらそういった感想を持つ方が大半かと思われます。
逸脱したカメラワークやアート・デザイン、彼らの会話の中に隠れた伏線に気づかなかったというのもありますし、下品さが際立つのでその側面しか見ることしかできない。
そのためそう感じるのも頷けます。

実は単なるコメディではなく、便利過ぎる社会への風刺や、狭量的な物事に対する捉え方の警告、映画のオマージュや意図等がいたるところに張り巡らされた映画です。
※しかし、オナラで空を飛びます。

確かに言えることは、この映画をおもしろいと感じる方とはぜひお友達になりたい。
いろいろな人生経験を経てたくさんの楽しみ方を知っている方に違いありません。

硬派な演技で定評のあるラド(ダニエル・ラドクリフ)くんがこのシュールな世界を見事に死体役で再現しているところにも注目です。

この映画はコメディのためネタバレと言うほどのものはないのですが、以下作品内容に含む記事となりますのでご注意下さい。

あらすじ

ポール・ダノ演じるハンクが無人島で首を吊ろうと決意した。
今まさにそのときダニエル・ラドクリフ演じる死体のメニーが波打ち際に横たえているのを発見。
いくら呼びかけても返事がなく、ハンクはこれが死体だと思い、腰のベルトを抜き取り、首吊りのロープとして再度利用しようとした。

首吊り台の上からその死体を眺めて、最後の時を噛み締めるその刹那
「ブリッ」と屁の音がする。
それは凄まじい勢いになり、死体が暴れだす。

何事かと思いハンクはその死体を馬乗りになり押さえつけるが、そのままハンクを乗せてオナラのジェットスキーで無人島から図らずも脱出する。
歓喜の声と海上を流れる光景ともに素敵な音楽が流れ出す。

別の島に着いたが、そこにはまだ人が居ない。
死体であるメニーを置こうとしたが、彼から飲み水が出てくることを知る。
信じられないと思いつつ、その水を飲み生を得るハンク。

そして死体のはずのメニーがゆっくりと口を開く・・・。

泣ける

ここからコメディと実社会への風刺が始まり、過激で下品な冗談かと思えば、なかなかウルッとくるものまで。
演出でもなかなか胸に突き刺さるシーンが多く、指から火花が出るシーンから、音楽へのつなぎ方、幻想的で白靄がかかった2人の何とも楽しそうな絵面はなぜか涙が出るほどです。

音楽

メニーの鼻唄などがきっかけで、壮大な森の中のただの1小節が、極彩色豊かなオーケストラに変貌する流れはなんて素敵だろうと思わずにはいられません。
シームレスで違和感や嫌味もなく、おシャレ。
このままおシャレな映画となるのではなく、お下品に笑えるところが絶妙なバランスとなってこの世界を演出します。
曲調もミニマル・ミュージックに近く、生から死までの単調に見えて徐々に変わる音響が心奪われます。

カメラワーク

メニーが画面の中央に入るような構図から、徐々に2人が並んで中央に収まる構図へと徐々に変わり、死体メニーと遭難者ハンクの絶妙な距離を演出します。
最後のカメラワークは度肝を抜かれました。
周りの環境を360°取り巻くようにハンクを中心に上下に揺れ動かしながら映し出します。
現実世界からの人々の目線を再現しており、観ているこちらも胸が痛い。

シュールでお下品

彼を性的に興奮させると男性器が脱出のレーダーとなったり、彼の中のアーミーナイフのような便利機能が使えるようになると分かります。
とにかくメニーが銃になったり、水筒になったり、火花散らして火炎放射したりと何でもありです笑
メニーを興奮させるためにハンクは女装をするのですが、その演出がやけに美しくおシャレ。シュール。でも綺麗で人知れず彼らの笑顔でいる姿に涙が出ます。

おわりに

最後のTHE ENDの弾幕で2割程の観客から笑いが起こりました。
「え、これで終わり?くだらなすぎる笑」という笑いだったのでしょうか。
私はTHE ENDの弾幕を見た瞬間に、色々と考えさせられてしまって笑いなんて起こる隙きがなかった。

ずっと不思議に思ってたのですが、私はここで、これを単なる「コメディ」として終始観ていた客層と「コメディ+α」で観た客層とで分かれたのだろうと後々感じました。

もちろんコメディとして見るべきなのですが、暗喩、意図、オマージュがいたるところに張り巡らされており、かなり観察しがいのある映画でもあります。

お下品でおシャレ、男性よりも20-30代の理解ある(?)女性にオススメしたい作品です。
いや、本当は賛否両論真っ二つで、見方によっては人格を疑われるのでオススメしにくいのですが笑
あとは「なんで?」という疑問をとことん突き詰めたい方には不向きかもしれません。

大変素晴らしく下品な映画です。拍手。


参考画像 出典

A film by DANIELS, starring Paul Dano and Daniel Radcliffe. NY/LA June 24 – Everywhere July 1
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