ボードゲーム「Numberplace City」ジョーカーという映画の紹介の仕方によって評価が変わるのと似ている

ゲームマーケット2019秋 の新作 Numberplace Cityのレビュー感想です。エッセンシュピールでも公表された本作は、古典的なゲームに色鮮やかな「楽しさ」をもたらした。

はじめに

これまでレビューしている作品が面白いものばかりで、「何が起きているんだ」という気持ちが隠しきれない。

ツイートもしたが、今年秋のレビュー作品が斟酌なくどれも面白い。

(中には説明書が未完成で紹介出来ないものもああるのだが、完成後にレビューをするというお話でまとまっている)

そして本作も同様に楽しい。

あーこう、無駄に楽しい楽しいというレビューサイトにはしたくないのに、全くどうしようもない。

では何が「楽しい」か。

「楽しい」はかなり人によって異なる。

苦虫を噛み潰したようなかおをしながら「楽しい」とつぶやくこともあるし、

お酒の勢いに任せてブラフ!と叫びながら盛り上がる「楽しい」もある。

今回のゲームはこの中間とお伝えすれば分かりやすいかもしれない。

皆様はナンバープレイスメントというゲームをご存知だろうか。

ナンプレ、数独として一時期国内でブームとなった代物だ。

分かりやすい数字の組み合わせで簡単に楽しめるということで、老若男女、幅広い世代に人気となった。

本ゲームはこのナンプレを基礎として枠組みを作られているものだが。単にこれを「パズルに好きな人にオススメ」というのは少し芸がない。

ボードゲームが好きでパズルが好きな人も中には多いだろうし、じゃあ三度の飯よりパズルが好きな人間にこれをお勧めできるかと言われれば断じて違う。

そうだな、例えるならば最近話題の映画「JOKER/ジョーカー」を紹介するのと似ている。アニコメ大好きでバットマンのジョーカーの誕生秘話を実写で観たい、という目的での紹介は一番避けなければならない。

あれはどちらかと言えば一般大衆の心にこれでもかと突き刺すヒューマンストーリーだ。

悪道で天才的なジョーカーではない。

別にバットマンのジョーカーでなくとも良いのである。

(後に監督もアメコミが人気だから乗っただけという爆弾発言が飛び出している)

このワーカープレイスシティも、「パズル」や「ナンプレ」という経緯をすっ飛ばして、とりあえずやらせることが何よりも重要だ。

「パズル」という目的でやってしまうとどうしても楽しめないし、苦手とする方も居るだろう。

このゲームはパーティーの局面も併せ持つ。

囲碁や将棋と同じ様に、自分の場を巧く埋めていくのだが、負けそうになったら盤面ごと90度回転させることが出来る。

しかも、それがタイミングよく出来るかは「パズル」とは別のプレイング次第なので、ゲームとして良く機能している。

このゲームを行う時に私が初めに「まずったな」と思ったのは、ナンバープレイスメントの説明だ。

数独やナンプレと説明するだけで顔が強張る方もいる。

だから盤面を埋めていくエリアマジョリティだとか、埋めてもひっくり返せるとか、むしろこれらが面白いのだから皆でやるナンプレという説明は分かりやすいが、少し考えなければならない。

いずれにせよ、愉快な楽しさと地道に詰める愉しさのどちらも併せ持つ本作を紹介しよう。

システム

前述の通り、ナンバープレイスと同じルールだよと言ってしまうとそこで引いてしまう人がいるので少し異なる説明の仕方にしようと思う。

簡単に言うのであればこれは陣地取りゲームだ。

プレイヤーは1から9までのタイルを持っている。

それぞれルールに従ってこの1から9までのタイルを置いていくのだが、 この位置から9までのタイルには実は効果がそれぞれある。

この効果の恩恵を受けるのはスタートプレイヤーから一番近いプレイヤーで、かつ、数字が一番低いタイルを置いたプレイヤーである。

この効果がいろいろと面白い。

例えばもし仮に9のタイルを置いた場合、 そしてその効果がもたらされた場合は、9のタイルを置いたプレイヤーが勝利する。

9の効果がゲームに勝利するゲームが終了するという、 かなりふざけた効果である。

しかしながら、 このゲームを何回かプレイしている時に、 一度だけ実際に起きたことは事実である。

これはもう笑うしかなく全員が爆笑していた。

今これを執筆している時も思い出すとニヤニヤが止まらない。

そうこのゲームは基本的にはパーティーゲームなのである。

確かにナンバープレイス通りに1から9までのタイルを置いていかなければならないが、それぞれのタイルの効果が非常に面白く、 配置する度に 誰がその恩恵を得るか、そして何の数字が起きるのかというのを考えるのがなかなかみんなを楽しませてくれるスパイスなのである。

後は先ほど伝えたとおり、仮に数字の5のタイルを置いた場合は、 建設エリアの交換という効果が発動され、盤面が九州道もしくは180度を回転させることができる。

自分のエリアは決まっていることから、これがいきなり変えられるとなると非常に厄介だ。

思わず笑顔になってやめてくれ~~~と叫びたくなる笑

他にもルール通りに置けない場合、 もしくは他のプレイヤーから邪魔される場合があるのだが、数字の3のタイルを置けば、汚名返上としてペナルティタイルをゲームから除外する事ができる。

このペナルティタイルというのは、ナンバープレイスのルール通りに置けなかったタイル、 もしくは他のプレイヤーから当てられたタイルがペナルティタイルとなる。

実は、スタートプレイヤーから順番にタイルを置いていくのだが、前手番のプレイヤーが置いたタイルの上に 裏向きで置くき。そしてすべてのプレイヤーが表にしたときに、その数と同じタイルを置くことができれば、当てられたプレイヤーはそのタイルをペナルティタイルとして保持しなければならない。

しかし外せば、 自分がペナルティタイルをもらわなくてはならない。

なかなかこれは難しいのだが、 実はナンバープレースメントは最後に何を置くのかルール通りにやれば決まっているので実はあの数字は何かということがわかってしまう。

しかしながら自分が持っているタイルの限界の数は二つしかないので、 その数字を後で歯の人間が持っているかどうかが非常に賭けだ。

実はタイルを置いた時にオープンされたタイルかそれとも裏向きのタイルを取るかを選ぶことができる。

オープンされたタイルを取る場合自分が欲しい数のタイルを取ることができるが、 しかし他の全プレイヤーからあいつはの数を持っているということがばれてしまう。

この場合自分の目星の数が取れる代わりに相手に情報を与えるので非常に考えところである。

逆に裏向きのタイルも取ることができるがそれはランダムであるので、どこに使うのかというのが非常に悩ましい。

もし仮にそのタイルが使えなかったとしてもあえて ペナルティタイルとして自分の手元に置くことで 、そのタイルの効果を得る可能性がある。

つまり意図的にペナルティタイルを持つということも選択できる。

しかしながらこのゲームはペナルティタイルが5枚以上溜まった時点で即脱落となるので注意したい。

ゲームの終了条件は効果使用中で無条件勝利の数字の9の効果を使用するか、 誰かが特定の条件で3点以上点を手にするか(8のタイルの効果や指定された箇所にタイルを置くなど)、ラウンド終了時配置可能エリアが全て埋まっていたり、などである。

点数については横列か縦列、もしくは同じブロックの最後の一枚、つまり9枚目のタイルを置くとボーナスで勝利点が1から2までもらうことができる。

ナンバープレイスのルールでは必ず9枚目を置くことは出来るのだが、 他のプレイヤーがその数字を知っているのでなかなか難しいところではある。

この辺りのジレンマが非常にボードゲームらしく面白いのだ。

感想

少しパーティー俺に話してしまったが、 実際にはかなり考えるゲームである。

というのも実は全てのますが全て自分の陣地というわけではなく、 他人と干渉しているエリアがあったり、自分だけの特定のエリアがある。

そのため他人と干渉しているエリアだと最終局面で、その場所を取り合う、 もしくは置かれる数字を予想してそれを奪取することを考えてゲームを進める必要がある。

ただこれを説明してしまうと、どうもパズルゲームという気がしてならなくなり、 せっかくいろんな人が遊べるゲームなのに、そこで壁を作ってしまうのは非常にもったいない。

もちろん席順は少なからず影響するがそれよりもまず、タイルの効果が非常に面白いので、そこまで気にする必要もなく、 この気にする必要もないというバランスがこのゲームの考える要素と歯車のように噛み合い回るのでスムーズにそして滞ることなくプレーが進んでいく。

ナンバープレースメントはやはりパズルという様子が強いのでどうしてもウケない要素というのはあるのだが、このゲームはそれをボードゲームに例えることで難なくクリアしている。

ナンバープレースメントをやったことないプレイヤーも、 ナンバープレースメントガス興味あるもしくは好きだというプレイヤーが居れば、人生の間で一度はやっこのゲームをやってみても損はないだろう。

新しいゲームというのはいつでも人をワクワクさせる。

古典的なこのナンバープレースメントをここまでしっかりと調理した製作者に拍手を送りたい。

ちなみにこの製作者は無類のパン好きであるので、色々と聞いてみるのもまた一興だろう。

インタビュー

さけ
さけ

本作を制作された経緯
ナンバープレイスメントとボードゲームを見後に融合した本作、とっても面白かったです。何かきっかけなどはあったのでしょうか。

昨日夜に、ゲムマのブログにデザイナーノートを載せました。そこに先に書いてしまいましたが、改めて回答させていただきます。
正月に田舎の実家に帰り、親戚一同が集まって宴会をやっていました。食事をしながらふと机の下に目を落とすと、ナンバープレイスの分厚い本が何冊もあります。そこで「ナンバープレイスやってるの?」と聞くと、親戚一同で好き勝手にナンバープレイスの本を買って、解いては消して、まだやっていない親戚にあげているというのです。あまつさえ、そこで問題を解き始める始末。
しかし彼らは普段、私がボードゲームを誘ってもあまり遊んでくれません。さらに言えば平均年齢も非常に高い。
ただし、ゲームが完成して以来まだ田舎に帰っておらず、また、完成した「Numberplace City」は結構複雑になってしまったので、親戚の人たちが遊んでくれるかは不明です。

さけ
さけ

考える、ということについて

インストだけを行うと、とても考えるゲームだと思われます。

しかし、場面を回転するという説明を読んだだけで笑ってしまいました。

他にも当てにいくアクションなど、単に「考える」だけで終わらせない仕組み作りが、このボードゲームの本質かと思われます。

「考えるのが難しい」を払拭するためにかなり工夫があったと思いますが、ボツ案なども含めて色々と教えてください。

二種類の回答をします。

最初に、「「考えるのが難しい」を払拭する」というご指摘ですが、おっしゃる通り、思考の負担を減らすことは意識しました。

私は様々なボードゲームの作り方などの本を見つける端から読むようにしていますが、確かその中に、プレイヤーの選択肢は4~7程度が良いと本で読みました。人間は選択肢が少ないとつまらないと感じますが、一定数より多いと選べなくなるのです。手なりでプレイするプレイヤーがでたり、ダウンタイムが長くなってしまいます。

そこで、4人プレイ時の配置可能ブロックを4つに絞りました。手持ちタイルの数も4枚にしています。一番最初のテストプレイではタイルを置けない状況が起きないように8枚にしていましたが、やれることが多すぎて考える気が起きないのです。

ゲーム中考える選択肢としても

・タイルを置きたい

・タイルの効果を発揮したい

・9枚目ボーナスを取りたい

・敵の9枚目ボーナスを阻止したい

と4つ程度がメインになるでしょう。

プレイが進むにつれ置けるタイルが減っていくので苦しさが増します

次に、タイルの効果についてです。

タイルの効果は9種類あり、9の効果が発動する機会は極小のため、「ゲームに勝利する」というのは最初から考えていました。

あと、せっかくボードを使うゲームなのだから、それを使いたいと思いました。何よりボードは高いのです! 特注したのでなおさら高い。

将棋をやっているときに誰もが憧れる、盤面を回転させて大逆転! が出来たら楽しいだろうな、と。

そのほかのタイルの効果は、このルールならこの効果はないといけないよね、という判断で作ったり合体させたり分離させたりしています。

さけ
さけ

数値の調整

数値の調整はどのようにされましたか。

いくら合わない数を消すルールがあったとしても、なかなか大変なように思えます。

テストプレイは結構長い間、細々とやっていました。

テストプレイでの調整は

・手持ちタイルの枚数

・タイルの効果

・上乗せルールの追加

がメインです。

9種類の効果の調整はやってみないと分からない点もありました。

最初は盤面の回転も右90度、左90度、180度回転の三種類ありました。

さらに、配置した最少の数字のテキストしかプレイできませんでした。これだと、偶然5が最小になり、ボードを回したくないのに回してしまう、というイベントは起きますが、自分の意図での大逆転の楽しみが無くなります。

それを解消できる、「最少数以下の効果の中から一つを選ぶ」という調整は最後に決定したアイデアです。

最初は各自1枚の特殊タイルを持っていて、それを使って盤面のタイルを抜くことができました。しかし特殊タイルを作るのは止めて、4の効果として残しました。出来る限りシンプルに作りたかったのです。

さけ
さけ

デザイン

ファンタジーというか、不思議というか。

独創性のあるデザインだと感じました。

何か見てほしいポイント、なぜこのデザインにしたのかを教えてください。

このデザインは、イラスト・アートデザインの事だと思い、回答します。

最初、テストプレイ用のタイルには、フリーのピンズ(麻雀のあれです)のイラストを使っていました。そのころのタイトルは「ピンズプレイスパニック」でした。アラビア数字や漢数字を使うより、ピンズのデザインはユニバーサルだと思います。アラビア数字は6と9の問題がある限り、全方位から盤面を見るこのゲームでは不向きですね。

テーマを海底都市建設にしたのは、テーマなしのアブストラクトにするよりも、都市や街の建設という風にした方がより楽しくなるだろう、と考えたからです。みんな自分の箱庭を作っていくのは好きですからね。私も好きです。

そして、ピンズのデザインを活かすために、丸をドームを上から見た図に見立てました。

ドーム都市といえば、火星や海底都市でしょう。(アシモフの『鋼鉄都市』の舞台は地球ですが……)

そして火星テーマのボードゲームは今流行っているので、競争相手の少ない海底都市にしました。

あとはイラストレーターさんとデザイナーさんにイメージを伝えて作ってもらいました。説明書にも載せていませんが、タイルごとに都市機能を分けていますね。

1:市庁舎

2:農場・養殖場

3:警察・消防・発電所

4:娯楽施設

5:飲食街

6:複合教育施設

7:公園・湖・山

8:商店街・工場

9:住宅地

説明書は限界ギリギリにみっしり詰まっているため、この情報は掲載できませんでした。

日本語のルールは、英語、ドイツ語、フランス語の説明書の2/3の面積で収まっており、デザイナーの人には「もう限界」と言われました。

さけ
さけ

最後に何かあればメッセージをお願いします。

このゲームには私の希望と野望と欲望が詰まっています。

・自分にしか作れないゲームを作りたい。

・ナンバープレイスを使ったボードゲームを作りたい。

・ボードを使った、言語依存性の低いボードゲームを作りたい。

・お年寄りや外国の人にも楽しんで遊んでほしい。

・ドイツゲーム大賞を取りたい。

どの程度作品が広がってくれるかはわかりませんが、沢山の人が遊んで楽しんでくれることを祈っています。

見かけたら手に取って見てください。機会があったら遊んでください。

よろしくお願いします。

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