【ネタバレ解説】ララ・ランドを見事に越えたミュージカル映画の可能性「グレイテスト・ショーマン」

グレイテスト・ショーマン

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おすすめ度

私はアクションやB級ホラー、伏線だらけのミステリーが意外に好きだったりするのですが、ミュージカルも楽しいと感じる性分です。

同制作陣のララ・ランドは大変感銘を受けましたし、爛々としたミュージカル調を大変収まりよくリアルへと落とし込んだ傑作だと思いました。

本作はそんなララランドの側面を持ちつつ、さらに王道を貫くエンタメに心が奪われました。

 

俳優のヒュー・ジャックマンはウルヴァリンのイメージが強いのですが、元々彼は舞台出身のために美声で表現力豊か。ウルヴァリンの撮影ではウルヴァリンの身長に合わせるために共演陣が厚底を履いたり撮影角度を買えたりと身長を低く見せる工夫がありました。

しかしグレイテストショーマンでは彼自身が持つ身長190cmの魅せるパフォーマンスを存分に味わえます。

初めの出だしから目を釘付けにし、耳から脳に勢い良く歌が響きます。

舞台や生のお芝居でもないのにここまでミュージカルで感動するのかと思わずに入られません。ララランドよりも映画っぽさを残しつつ、かと言って歌劇が抑えられていない。

ストーリーは王道で中身が薄く見えますが、実はミュージカルとの相性が抜群。
ストリートをわざと軽く描くことで、王道のストリートを更に濃厚に底上げしてくれています。

映画とミュージカルを最高の親和性に惹き立てた本映画、ご覧になっておらずミュージカルに興味がおありならぜひご覧下さい。

 

以下はネタバレを含みます。

ストーリー自体はよくあるお話なので、気にならない方はご覧下さい。

 

あらすじ

小さい頃から想像力豊かで夢の実現を求めるバーナムは幼馴染の令嬢チャリティと駆け落ちします。貧しいながらも2人の双子の娘を授かり仲睦まじく暮らしていました。

しかし、会社は倒産。それにもめげずにバーナムは倒産した会社の既に存在しない資産を借用して銀行からお金を借ります。

奇怪なものに興味を求める客の心理を利用してバーナム博物館を建設しますが全く客足はよくありません。

娘たちの「生きているものが観たい」というヒントをきっかけに「小人症」や「髭の生えたオペラ歌手」「全身入れ墨男」のような、普段外には出ない人たちを集めた見世物小屋を開始。

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これをきっかけに大成功を収め、妻には一緒に夢見た邸宅と子どもたちには昔願ったおもちゃをプレゼントするのでした。

しかし街の中では賛否論両論。

批評家には酷評され、住民には退きのデモが絶えず行われておりました。

バーナムはそんな声をものともせずに「上流階級の客」をどのように獲得するかを考え、劇作家で新進気鋭のフィリップ・カーライルを誘いパートナーとします。

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これによりビクトリア女王に拝謁を果たし、そこのパーティーに招待されていた欧州一と評判のオペラ歌手ジェニー・リンドと出会います。

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彼は彼女をスカウトして初舞台を成功させ見事に上流階級の客層を手にするのでした。

彼はその後サーカスをほったらかしにして、全財産を投げ売って子どもたちの静止を振り切り全米ツアーにリンドと行うのですがリンドはPTバーナムに好意を抱いており、これを拒否したバーナムにリンドは客集の前で別れのキスと舞台辞退を決めます。

バーナムの豪邸は差し押さえられ妻はスキャンダルから実家に帰ってしまいます。

さらに住民の暴走によりサーカスは炎上し、バーナムは全てを失い酒場でお酒を傾けているのでした。

しかし、全てを失ってもサーカスを続けてきた仲間たちの励ましに自らを奮い立たせ、妻を呼び戻します。

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元々土地代の高かった見世物小屋を移動式にしてサーカスとして初めたところ、見事に大成功を収めます。

そしてパートナーのフィリップ・カーライルにサーカスを預けて、バーナムは家族との愛を育むのでした。

 

見どころ

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ミュージカルと演出の対比

貧しい頃。満月の夜に屋上で干されているシーツを波風に見立てて、バーナムと妻であるチャリティと踊るミュージカルシーンがある。ここも甘美で2人の愛情がよく現れている。

シーツの影を追い求めて最後にめくると妻を見つけて抱き合うのだ。

その後、バーナムが歌手とともに遠征に行くのだが妻が一人きりでバーナムを待つシーンでカーテンを靡きながら踊るミュージカルシーンが有る。

カーテン越しにバーナムと踊っていくのだが、最後にカーテンが靡くとふっとバーナムが消える。

この対比による演出が実に良く、感動せずにはいられない。

曲調のテンポが同じ作りでありながら、妻の独唱には歌自体にところどころにマイナーコードが入っており意識せずとも、貧しい頃の映像を思い出させる仕組みだ。

 

娘の隠れた願い

 

お金のないバーナムはウィッシュマシーンと称した自作のライトを渡し、娘たちに願いを聞く。

2人の娘たちは双子であり、1人は「サンタと結婚したい」、ともう一人は「バレエのシューズが欲しい」というものだった。

バレエのシューズは踊り好きな姉が願ったものだ。

そしてもう一つ、「サンタと結婚したい」というものもまたこの映画のテーマである家族の愛情を強く表している。単純に考えれば欲しいものをくれる=サンタ、だからサンタクロースと結婚したいという願いになりそうだが、この時は非常に貧しい生活を強いられており、娘2人にサンタのプレゼントを毎年渡せるはずもない。

 

つまり、妹はサンタ=父親ということを理解して、なおかつ、そのシーズンだけでなくずっと居て欲しいという願いから「サンタと結婚したい」と言ったのではないだろうか。

 

あまり強調されていないシーンだが私の中には強く残るものがあった。

 

後に成功したPTパーナムは、おそらく幼少期に2人で遊んだ廃屋を沸騰させる家を買い取り妻にプレゼントする。

そしてその後、彼が娘たちにプレゼントしたのはバレエのシューズと「ドールハウス」だった。

つまり、PTパーナムは「ずっと一緒に居て欲しい」という気持ちを理解してプレゼントしたものが、家族の愛がずっとそばにあるドールハウスであると解釈した。

涙腺の緩む隠れたシーンの一つではないだろうか。

 

また、成功を収めた邸宅の妻のベットサイドはあの頃のウィッシュマシーンがあり、グッとくるものがあります。

 

輝かしさに目を奪われない

 

移動式サーカスで成功を収めたバーナムはゾウで家族の元へ向かう演出があります。

これは実在のPTパーナムが移動式サーカスでの一番人気高いものがゾウだったのでこれを残したのだろう。

最後のバレエのショウで、娘の1人はバレエの主人公ではなく、木を演じていた。

スポットに当たることだけが全てじゃないことを物語っているのではないだろうか。

 

最後に

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全米公開開始時では批評家レビューは酷評、その影響により800万ドルと不調でした。

その批評は内容の希薄さと史実と異なるというものがメインでした。つまり「PTバーナムの虚像を謳う映画だ」という批判だったようです。

しかし、そこから顧客の口コミにより公開2週目の週末は1,550万ドルの興行収入を記録し粘りのロングラン。さらに全英アルバム・チャートでは、6週連続で1位を獲得しており、私もAmazon.jpですぐさま購入をポチりましたが日本国内では週間1位。

 

さて、映画中にサーカスを観た芸術評論家とPTバーナムの会話があります。

「あなたが行っていることはでっち上げにすぎない。全て嘘と偽りだ。」

「お客が笑顔で出てくるサーカスと、記事を見終えた後の顔が皆暗い評論と、どちらが人を幸せにするだろうか。」

 

そして歌手のジェニー・リンドの質問にPTバーナムはこう答えています。

「あなたの評判は悪いものかもしれないわよ。」

「悪い評判も良い評判も、良い宣伝だ。」

 

そしてエンドロールの最後にはこんなセリフが映し出されます。

 

THE NOBLEST ART IS THAT OF MAKING OTHERS HAPPY.-P・T・BARNUM

「至高の芸術とは見る者を幸福にするものだ。」-P・T・バーナム

 

国内でも酷評が散散されておりますが、観終えた観客の笑顔が、答えなのかもしれません。

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